この写真はシリアの子供たちが、バルコニーから爆弾の被害があった現場を眺めている様子を収めた一枚である。私たちよりもずっと年下の彼らにとって、ごく身近な場所で残酷な殺し合いの場を目撃するのは日常なのかもしれない。もう既に家族の誰かを失っているのかもしれない。一方私たちの中で、人を殺傷するためだけに作られた兵器を実際に見たり、目の前で家族を失う理不尽とも呼べる暴力を経験したことがある者は、果たしてどれくらいいるのだろうか。当たり前に大人と呼ばれる年齢になることができた私たちに対して、彼らは明日の命も保障されていないのであろう。私たちと彼らは距離も環境も程遠く、普段見ている光景も全く違う。だが、心の中でも彼らを隔てる壁を作ってしまっていいのだろうか。彼らの目に映る日常を変えるために、私たちは何ができるだろうか。
[早稲田大学 疋田 日向人]