AFP通信会長兼最高経営責任者(CEO)
ファブリス・フリース

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)は、あらゆる国に影響を及ぼし、あらゆるトピックに浸透し、あらゆる報道を吸収するという世界規模のニュースの典型を示しています。このグローバルストーリーに見いだせるのは、中国・武漢で誰かが謎のせきをしたことが、米ロサンゼルスでトイレットペーパーの在庫に影響を与えるという、「グローバリゼーション」の代名詞ともいえる「バタフライ効果」です。感情を揺さぶるニュースという意味でこれと比較される2001年9月11日の米同時多発攻撃事件でさえ、世界中のこれほど多くの人々の日常生活に影響を及ぼすことはありませんでした。

 この地球規模のニュースを報じる上で、世界201支局・1700人のジャーナリストを擁するAFPのネットワークは、可能な限り現場の近くに存在するという強味を発揮しています。AFPは今回、武漢でコロナ危機が始まったときに現地にいた唯一の国際報道機関でした。その後、ロックダウン(都市封鎖)がどうやって始まり、それが連鎖的に広がり、今はロックダウンがどうやって解除されつつあるかを、公共の交通機関から、店先から、学校から、最初に再開された娯楽施設から報じています。それはおびえながらのプロセスであり、元に戻る可能性が常にありますが、一部は徐々に再開しています。

 わが通信社のジャーナリストらは、各地の対応の類似性と相違性、そしてグローバル・ビレッジの失敗とともにその回復力を伝えることに全力を注いでいます。アマゾン先住民の脆弱(ぜいじゃく)性から、仏ミュルーズの病院の患者の移送まで、地球規模で共鳴するローカルな話題も伝えています。そうした具体的なストーリーによって記者らは今後の世界がどうなるのか、貿易の流れの原則が「ジャスト・イン・タイム(必要なときに必要なだけ)」から「ジャスト・イン・ケース(万が一に備えて)」に置き換わった後の世界がどうなるのかを描こうとしています。

 AFPの全チームがここまで異例の緊迫感と辛抱強さで取り組んできました。この献身に拍手を送っているのは私だけではありません。この数か月間、私たちの元には世界中のクライアントから激励のメッセージが寄せられてきました。テレビ局、出版社、ラジオ局、ポータルサイトなど、現場での報道能力が制限されてしまった、あるいは完全に取り上げられてしまった大小のメディアが、わが社の対応力、取り上げるトピックの多様性、提供するフォーマットの多様性、マルチメディア報道の充実度などについて称賛を寄せてくれたのです。感染症データベースでは、インフォグラフィックの画期的な進歩により、テキスト・写真・ビデオをセットにした報道スタイルを完成させました。今や私たちはこれまで以上にクライアントの目となり耳となり、いずこであれクライアントが取材班を置いていない場所、行くことのできない場所での取材をサポートしています。

 クライアントからのフィードバックで概して重視されているのは、私たちが特に力を入れているある際立った特徴です。それは「見えない敵」を相手にしてさえ、人間的な顔を与えたいという不変の願望を反映したAFP報道の「人間味」です。最後に、今回のパンデミックはフェイクニュースの野外実験室といった様相を呈しました。この点でデジタル検証に対するAFPの投資は、公益の使命を果たすために役立っています。私たちは計14言語で活動するベテラン・ジャーナリスト80人による比類のないネットワークのおかげで、これまでに新型ウイルスに関する1000件以上のフェイクニュースを発見してきました。

 コロナ危機は異例の長期にわたるものですが、私たちは完走することができなければなりません。危機の初期の熱意を維持し、新しい仕事環境によってその熱意を侵食されないようにしなければなりません。これが私たちの課題です。

 AFPの強みはネットワークであり、その地理的な足跡は他に類を見ないものです。そしてもちろん総合通信社としてAFPは、あらゆる角度からの取材が可能です。厳しい渡航制限が課され、また不幸にも大きな打撃を受けた報道機関が経費削減を余儀なくされるであろう中、私たちの目的はシンプルで、これからも必要不可欠なサービスをクライアントの皆さまに提供して参ります。

Fabrice Fries
Chairman, Agence France-Presse