【6月17日 AFP】北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長の妹、金与正(キム・ヨジョン、Kim Yo-Jong)氏が急激に存在感を増している。

【解説】金正恩氏が死亡したら、北朝鮮はどうなる?

 与正氏は先週末、韓国との軍事境界線沿いに位置する南北共同連絡事務所が間もなく「完全に崩壊するだろう」と予告した。その言葉通りに16日、連絡事務所は爆破された。

 公式には彼女は朝鮮労働党中央委員会の政治局員候補にすぎないが、国営朝鮮中央通信(KCNA)が週末に行った声明の中で与正氏は「最高指導者、わが党、国家によって公認されたわが権力」と言及した。

 韓国統一省によると、1988年に生まれた与正氏は、故金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記と3番目の妻として知られる芸術団の踊り子だった高英姫(コ・ヨンヒ、Ko Yong-Hui)氏との間に生まれた3人の子どものうちの一人だ。だが北朝鮮の指導者一家に関する情報は常に秘密が多く、与正氏が結婚しているかどうかも不明だ。

 与正氏は兄の正恩氏と共にスイスで教育を受け、2011年の父の死後、正恩氏が最高指導者を継承すると急速に出世していった。

 韓国・北韓大学院大学(University of North Korean Studies)の梁茂進(ヤン・ムジン、Yang Moo-Jin)教授は、正恩氏と与正氏との関係が特別親密であることに「疑いの余地はない」と述べ、「2人は海外で孤独な幼少期を共に過ごした。このことが兄妹愛に加えて、同志愛にも似たものを育んだと思う」とAFPに語った。

 北朝鮮の歴代指導者に女性はいないが、今年初めに正恩氏が数週間公の場に姿を見せなかった際には、兄が亡くなった場合の後継者は与正氏になるのではないかとの臆測が渦巻いていた。

 北朝鮮の指導者はこれまで常に世襲制で、建国の父・金日成(キム・イルソン、Kim Il Sung)国家主席とその子孫を指す「白頭血統」の中でも与正氏は特にその名を知られている。

 専門家らは、正恩氏を批判するビラを北朝鮮に送り込んでいる韓国の活動家や脱北者らに対する北朝鮮政府の怒りを与正氏が代表する姿や、今やそれ以上の役割を担っている姿を国営メディアで流すことには、朝鮮人民軍やタカ派の信頼を強める意図があるのではないかという。(c)AFP/Claire LEE