【5月30日 AFP】韓国の電機大手サムスン電子(Samsung Electronics)から解雇され、地上から約25メートルの高さにある監視カメラ塔の上から抗議を続けた男性が、同社と和解に達したことで約1年ぶりに地上へと降り立った。

 60歳のキム・ヨンヒ(Kim Yong-hee)氏は1995年、当時勤めていたサムスンで労働組合を立ち上げようとしたところ、同社から解雇されたという。

 キム氏は謝罪と復職を求めて20年以上にわたり、サムスンに対する抗議を展開。昨年には首都ソウルの富裕地区・江南(Gangnam)にあるサムスン電子のオフィスビル近くで、交通監視カメラが設置された塔によじ登った。

 そうしてキム氏は、頼りとする支持者らが持参する弁当や衣服、携帯電話のバッテリーなどを地上からロープで引き上げて、354日間をそこで過ごした。

 だがキム氏は28日、内容は非公表ながらサムスンと和解に至り、翌29日夜には支援者らに迎えられながら地上に降り立ち、花束が手渡された。

 キム氏はAFPに対し、「足を伸ばすことすらできないような狭い場所」の上で暮らし、「パニック障害に苦しみ、飛び降りようとする衝動と何度も闘わねばならなかった。サムスンが今後、すべての従業員のいかなる組合活動も本当に保証することを願っている」と述べた。

 これに先立つ数週間前、贈賄罪などに現在問われているサムスンの李在鎔(イ・ジェヨン、Lee Jae-yong)副会長は、昨年までの数十年間続いた同社の「組合禁止」方針について謝罪。これを受け、キム氏は抗議活動を終了させる決断に至った。

 サムスンはキム氏に対し、「問題を迅速に解決できなかったこと」について謝罪を表明した。(c)AFP