【5月26日 AFP】2か月にわたる新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)を緩和したフランス。東部ミュルーズ(Mulhouse)のバレエ団はこのほど、スタジオでのレッスンを再開し、プロのダンサーがスタジオに戻り始めた。ミュルーズは新型ウイルスの打撃を大きく受けた土地の一つだ。

 ミュルーズにあるラン国立オペラ劇場(Opera National du Rhin)のバレエ団「オペラ・デュ・ラン(Opera du Rhin)」は、ロックダウン緩和後にフランスで最初にトレーニングを再開した。スタジオでは接触やペアでのダンスを避け、厳格な感染防止策を徹底する必要がある。ダンサーらは到着すると、体温を測り、外で靴を脱いで、練習用の衣装、そしてマスクを着用してスタジオに入らなければならない。更衣室は立ち入り禁止だ。

 スタジオの床には、ダンサーの立ち位置が黒いテープで示されている。ピアノの伴奏に合わせて優雅に動きながらも、3.5メートルの距離を保つことができる。ダンサーらは、小まめに手の消毒も求められる。マスクやバー、水筒など、何かに触れるたびにだ。

 ダンサーのピエール・ドン(Pierre Doncq)さん(33)は、布1枚のせいで息苦しく、視界も妨げられていると不平をこぼす一方で、仕事に戻れたことはうれしいとして、「実際のところ、慣れてきています」とも話した。

 バレエ団の芸術監督であるブリュノ・ブーシェ(Bruno Bouche)氏は、「マスクを着けて踊るのは大変です」と語った。これが、トレーニング再開時の「最大の課題」だったという。オペラ・デュ・ランは、バレエ団のために独自のマスクを製造している。

 ロックダウン解除後、初の練習を終えると、ダンサーらは連れ立つことなく個別にスタジオを後にした。更衣室でのおしゃべりやシャワーはない。

 スタジオでのレッスンは1日3回に分けて行われる。従来は6〜7時間のレッスンが行われていたが、現在は1回1時間だという。レッスンの合間には、スタジオ全体の消毒作業が行われる。

 しかし、フォームが崩れることを恐れるダンサーらは、わずか1時間でさえ有り難く思っている。

 封鎖下でオンラインレッスンを行っていたブーシェ氏は、「ダンスは私たちの生活そのもの。8週間も(バーではなく)椅子やクローゼットをつかんで(練習して)いるのはだんだん大変になってきていた」と語った。(c)AFP/Marie JULIEN