【6月15日 AFP】元ラグビーニュージーランド代表のレジェンドで、数年間にわたり心の中の魔と闘ったジョン・カーワン(John Kirwan)氏は、自身が「ポケットサイズの心理カウンセラー」と呼んでいるスマートフォンアプリを公開し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウン(都市封鎖)で精神的に苦しむ母国の人々を支援しようとしている。

 現役時代にオールブラックス(All Blacks、ニュージーランド代表の愛称)のウイングとして母国のW杯(Rugby World Cup)制覇に貢献したカーワン氏は、国際舞台での輝かしいキャリアを終えた後、うつ病との闘いを告白するというスポーツ界のタブーを破り、フィールドでの栄光が私生活の幸福につながるという神話を崩壊させた。

 カーワン氏はAFPとの電話インタビューで、「うつ病を患い、抗うつ剤を使用していた。窓から飛び降りたくなった夜もあった」とすると、「その期間に教訓を得ることができた」と述べた。

 メンタルヘルスの問題に関する同氏の情熱は並大抵のものではなく、2012年にナイトの称号を授与されたのは、黒のユニホームで成し遂げた功績によるものではなく、その先駆者的な主張が評価された結果だった。

 自身の体験を基にメンタルヘルスに関する二冊の回顧録を執筆したカーワン氏は最近、よりハイテクなコミュニケーション手段として、「メンタミア(Mentemia)」と呼ばれる携帯電話アプリに専念している。

 このアプリは、性格テストとユーザーの実態を作り上げる認識ゲームを使用して、ストレスを軽減するためのヒントを提供。呼吸法や心の状態のトラッキング、精神をより安定させるための行動プラン、あるいは多忙時に休憩を促す機能などが盛り込まれている。

 単に癒やし系のようなアプリでありながらも、これは医学的根拠に基づいて心理学の専門チームによって開発されたものであるとカーワン氏は指摘している。「私が進んできた旅路の大半は、プロの意見を聞き彼らの話を理解することだった」「情報はすでに示されている。あとは科学と知識を得て、各自に適した方法で人々に提供することだ」

 イタリア語で「自分の心」という意味を持つ「メンタミア」は、もともとは大企業に勤める従業員のストレスを軽減するためのツールとして開発されたものだった。しかし、新型コロナウイルスの危機が深刻さを増す中、カーワン氏はビジネスパートナーとともに、ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)と闘うニュージーランドの同胞を支援する上で、このアプリが有効な役割を果たす可能性があると確信した。

 妻のフィオレッラ(Fiorella)さんはイタリア出身で、息子のニコ(Niko)が同国セリエCのサッカークラブ、レッジーナ(Reggina Calcio)でプレーしているカーワン氏は、「私はイタリアに家族がいて、これから何が起きるか予期していたから、仕事としてじっくり腰を据えて『何をすべきか?』問いかけた」という。

「やるべきことは、ニュージーランドの全国民にこれを提供することだった」

 現在55歳になるカーワン氏自身は、このアプリが提供する技術のおかげで個人的な状況が「生きながらえることから前に進むこと」になってから、かなりの時間が経過しているといい、「自分なりのちょっとしたプランで精神の健康を維持している。今朝も起きてシャワーを浴びたが、シャワーの秘訣(ひけつ)はその場に静止して水を楽しむことだ」「そのあと30分ほど少し体を鍛えてから、座ってコーヒーを飲んだ。今日はすでに精神の健康につながることを三つこなしたよ」と語った。(c)AFP