【3月25日 AFP】世界の大国の関心が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に注がれている今、シリアやリビア、イエメン、アフガニスタン、そしてアフリカのサハラ(Sahara)砂漠南縁のサヘル(Sahel)地域などで起きている武力紛争は沈静化するのか、あるいは激化するのか? この疑問に、専門家や国連(UN)の外交官らは、後者の深刻なリスクがあると指摘する。

 仏パリ政治学院(Sciences Po)の国際関係専門家、ベルトラン・バディ(Bertrand Badie)氏は、(新型ウイルスは)ゲリラ部隊や過激派組織にとって「天の恵みであることは明らかだ」と指摘。強い力を持つものが無力になれば、弱者が強者への報復を行うのは自明のことだと述べた。

 マリ北部では最近、イスラム過激派によるとみられる攻撃でマリ兵約30人が死亡したが、国連安全保障理事会(UN Security Council)が厳しい対応を取ることはなかった。

 新型ウイルスの流行前は外交上の強い関心の的だったリビアとシリアのイドリブ(Idlib)県では、今も内戦が続いている。

 こうした国々では今のところ、中国や韓国、欧州ほど大規模な新型ウイルスの影響は見られない。だが、ウイルスがひとたび内戦で荒廃した貧困国に及べば、壊滅的な被害が生じる恐れがある。

 国連は、外国からのまとまった支援が得られなければ、「数百万人」が死亡する可能性があると懸念する。

 ある外交官は、深刻な被害をもたらしているこの感染症は「制御不能」である以上、パンデミック(世界的な大流行)は必ずしも特定の武装組織を利することにはならないとし、「パンデミックで紛争が激化し、人道状況や人の移動をめぐる状況が悪化する恐れがある」と指摘した。