【4月7日 AFP】事故で両腕を失った女子学生のシュレヤ・シッダナゴーダー(Shreya Siddanagowder)さんは、新たに移植される腕について、その見た目をあまり気にしなかった──たとえそれがたくましくて色が濃く、毛深い男性の腕だったとしても。

 13時間におよぶ手術を経て、腕は無事に移植された。両腕は今ではほっそりとし、肌の色もシュレヤさんに合うように変わってきている。これには、医師らも当惑している。

「ドナーの男性は背が高くて細長い指をしていた」と、シュレヤさんの母スマさんはインド西部プネ(Pune)の自宅で、AFPの電話インタビューに答えた。

「娘はアクセサリーを着けマニキュアも塗っており(中略)、今では誰も男性の腕だったとは分からない」

 シュレヤさんの人生は、18歳の時にバスの事故に巻き込まれ、両腕に大けがをしてから一変した。2016年に起きた事故では、応急処置が遅れ、両ひじから下を切断しなければならなかったのだ。

 こうした移植手術は1999年に米国で行われてから世界的に200件しか成功例がなく、うち9件がインドでのものとなっている。手術の実施例が少ないのだ。

■ドナー探し

 インドでの最初の腕の移植手術は2015年に、南部ケララ(Kerala)州のアムリタ医科学研究所(AIMS)で実施された。シュレヤさんの手術が行われたのもこの研究所だった。

 最大の問題はドナーだった。インドでは文化的な理由から遺族が腕の提供をためらうことが多い。シュレヤさんの手術を行った医師団の一人、スブラマニア・アイヤー(Subramania Iyer)氏は、AFPの取材で「通常は長い間待つことになる」と話した。再建手術の専門家であるアイヤー氏によると、移植手術を望む患者は「提供される腕が異性のものであっても気にしない」のだという。

 シュレヤさんに移植可能な腕を用意することができたのは、2017年8月だった。家族にそのことを伝ると、移植について了承する返事があった。

 移植手術後は、新しい腕に体と脳がなじみ、動作や感知が可能になるよう1年以上に及ぶリハビリを受けた。