2020.03.26

CARS

【試乗記】フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRに竹岡 圭らが試乗! 「特命係長・只野 仁」

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRとは、どんなクルマ?

2020年1月に限定700台で発売されたVWゴルフの最強版。ツーリング・カー・レースを戦うレーシング・カー、VWゴルフGTI TCRのロードゴーイング・モデルとなる。2リッター直4ターボは最高出力290ps/5400~6500rpm、最大トルク380Nm/1950 ~5300rpmを発生、7段自動MTを介し前輪を駆動する。フロント・ディファレンシャル・ロックや、チタン・エキゾースト・システムなどでも武装する。全長×全幅×全高=4275×1800×1465mm。ホイールベース=2635mm。車重=1420kg。車両本体価格=509.8万円。


竹岡 圭の意見! 特命係長・只野 仁

ズバリ!「特命係長・只野 仁」です。このクルマ。そ もそもゴルフっていうのは、このカテゴリーの世界中のベンチマーク、つまり優等生なわけですよ。大人4人がしっかり乗れて、荷物はビックリするくらい積めて、ボディはカッチリして、最新鋭装備も安全装備もバッチリ。ないのは見た目の華やかさだけみたいなクルマじゃないですか。それがボンネットの中には、290ps/380Nmを発揮するエンジンが......って、いったいどこのレーシング・カーだよっ!と思ったら、まさにその通り。WTCRマシンのストリート・バージョンとして開発されたっていうのも、納得できる走り味なんです。


トルク・ステアを上手く抑え込んで、ハンドリングはゴルフらしくあくまで素直に。でもアクセルをガツンと踏み込めば、ゴルフらしからぬ官能的なサウンドがダバーッと耳をくすぐり、もうその辺の道じゃ負け知らず~って。ついつい調子に乗っちゃうけれど、ひとたび気持ちを切り替えれば、普通に通勤に使えるゴルフに戻れる。最高のギャップ萌えな1台ですね。


小川フミオの意見! 価値は揺るがない

たとえば、ワインを連想した。米国西海岸で青春時代を過ごした友人がいて、フランス・ワインに目もくれず、ナパかソノマのワインを飲む。たとえば、ナパの「ファーニエンテ」が上等なカベルネソービニヨンを作っていてくれればそれで幸せ、だそう。ゴルフの鉄板銘柄である、GTIもちょっと似ている。快適な高速走行、安定したコーナリング性能、高品質な作り、などの特長ゆえ、ドイツ勢や日本勢、フランス勢が強力なハッチバック・モデルで市場になぐりこみをかけている今でも、1975年の初代いらい、価値が揺るがないのだ。


「TCR」は標準のGTIを上回る290馬力の大パワーでありながら、前輪駆動方式を守る。4輪駆動より軽量ですむし、駆動力がしっかりかかっていれば、性能的にも劣ることはない、と長年の経験ゆえか(それでも4輪駆動が欲しいひとは「ゴルフR」を、という)。運転すれば、パワーに振り回されず、速いけれど快適なGTとしての出来のよさに感心する。長年愛されてきたブランドはけっして期待を裏切らない。熟成のゴ ルフ7だけにいまこそ買い時かも。


小沢コージの意見! クールでキレキレ

今ヤバいレベルの2ℓターボの最速ホットハッチ競争。どれもアホみたいに速いがダントツにハイテックで理性的なのはGTI TCRだ。純粋な加速では4WDのゴルフRやメルセデスのAMG系に微妙に負けるはず。しかし、ただでさえ速いゴルフGTIを60ps も上げて290psにしたパワー感はやはりスゴい。特に高回転域の伸びは、ノーマルGTIを遙かに上回る。


同時に、本当に驚くのはこれが二輪駆動のFFという厳然な事実とクールなハンドリングと乗り心地。ステアリングフィールはソリッドで揺るぎなく、足回りは締め上げられているが、快適さを残す。相当優秀な八方美人で、ハイパワーなラテン系とは性格真逆。ケンカしても感 情的にならない。特にコーナリング中、イン側のブレーキをつまんでステアリングの効きを良くするベクタ リングがスゴい。低速からのタイト・ターンでもアクセ ルをベタ踏みするとキューっとノーズをインに巻き込みつつ加速するのだ。室内も広いし、アホみたいに算数が出来るガリ勉スポーツマンのように優秀過ぎる。


藤島知子の意見! ストイックかつ、フレンドリー

WTCR(FIA世界ツーリングカー・カップ)で活躍するTCR規定で作られたレーシング・カーのイメージを踏襲した特別なゴルフGTI TCR。専用色のピュア・グレーは控え目で妖しげな雰囲気を滲ませながら、マットブラックの19インチ・アルミホイー ルや大径ブレーキ・ディスクと赤のブレーキ・キャリパー、チタン・エキゾースト・システムなどが、優等生的なGTIとは異なるストイックなキャラクターを滲ませる。センター・マーク入りのステアリングに手を添えて走り出すと、タイヤが路面を蹴り出すインパクトを強烈に伝えてくることに驚かされる。


ドライバーの操作に忠実に反応してみせるブレーキは操作次第で荷重をいかようにでもコントロールして走れる感覚。走行モードはスイッチひとつで選択が可能で、エコからコンフォート、ノーマル、スポーツと選べる。スイッチが入るとスパルタンなキャラクターに豹変するが、ゆったり流せば日常生活で活躍するハッチバックとして、ソツなく向き合ってくれるあたりは、究極の実用車であるゴルフらしさだ。


松田秀士の意見! ジキルとハイド

1976年に登場した初代GTI以来、史上最速のGTIだという。走らせればその実力はすぐにわかる。ノーマルのドライブ・モードでもアクラポヴィッチ製のチタン・エキゾーストからは既にレーシーな音質。スポーツ・モードにすれば排気音はさらにテンションが上がる。ベースとなるゴルフGTIに対してプラス60psの290psを発生。トランスミッションも7段DSGにスープアップ。0~100km/h加速は5.6秒と俊足だ。


19インチの扁平タイヤから伝わる路面の感触はダイレクト。減衰力可変ダンパー・コントロールのDCCは、レース・モードにすればハードにしっかりとステアリングにアクセルにブレーキに反応する。しかしコンフォートにすればウソのように快適な乗り心地と排気音でロング・ドライブも苦にならない。そのシートはゴルフの歴史を感じさせるチェック柄をセンターにあしらった本格的スポーツバケットシート。GTI TCRのこのコンフォートとスポーツのジキル&ハイドのような裏表差がスゴイ!


(ENGINE2020年4月号)

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