【2月25日 AFP】陸上男子長距離のモハメド・ファラー(Mohammed Farah、英国)が、2014年に行われたロンドン・マラソン(London Marathon 2014)の数日前にサプリメント注射を受けていたことについて何度も否定しながら、担当医師が米国反ドーピング機関(USADA)に対して自身への注射を認めていたと知るやいなや証言を翻していたと、英BBCが24日に報じた。

 五輪で4個の金メダルを獲得しているファラーは、元コーチのアルベルト・サラザール(Alberto Salazar)氏に関する調査の一環で、アミノ酸由来の物質であるL-カルニチン(L-carnitine)の注射を受けたかどうかUSADAの聴取を受けていた。このサプリメントは、スイスでサラザール氏の関係者から入手したものとされている。

 一連の調査の末に、サラザール氏はドーピング違反と結論付けられて4年間の資格停止処分を科された。同氏の違反行為のうち2件については、L-カルニチンの違法注射に関連したものとなっている。

 USADAの処分について現在スポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議を申し立てているサラザール氏は、2011年から2017年までファラーがトレーニングをしていた米ポートランド(Portland)のナイキ・オレゴン・プロジェクト(Nike Oregon Project)の責任者だった。

 2014年のロンドン・マラソンで同種目初挑戦にして8位に入ったファラーは、注射が行われた1年後、サラザール氏を調査しているUSADA職員に5時間近くにわたって聴取を受けたとされている。BBCが入手した聴取のコピーによると、ファラーは注射されたことを再三否定していた。

 聴取を終えて部屋を出たファラーだったが、英国陸上競技連盟(UKA)で長距離種目の責任者を務めているバリー・ファッジ(Barry Fudge)氏と言葉を交わした後、即座に前言を撤回。ファッジ氏はこの前日に、ファラーが注射を受けたとUSADAに話していたとされている。

 部屋に戻ってきたファラーはUSADAの調査官に対して、「はっきりさせておきたくて戻ってきた。申し訳ない。自分はあのとき注射を受けた。そうじゃないと思っていたけど」と明かした。さらに、「では、ロンドン・マラソンの前にL-カルニチンを摂取したのですね?」と聞かれると「はい」と回答し、「いろいろな話をしていた。アルベルトはいつも『何がベストなのか?』『何がベストなのか?』と考えていた」と付け加えた。

 そして調査官が「レース数日前、アルベルトがその場にいて、担当医師やバリー・ファッジもいたと、今になってすべて証言しているのに、さっき私がずっと質問した際には何も覚えていなかったというのか?」と尋ねると、ファラーは「全部思い出したが、あのときは覚えていなかった」と答えた。

 マラソン転向を断念し、今年行われる東京五輪の1万メートルで同種目3個目の金メダルを目指すファラーは、BBCへのコメントを拒否したものの、代理人は書簡を公表し、「聴取は記憶テストではない」とすると、「ファラー氏は一方的に質問を受けたという認識を持っている。部屋を出た直後にファッジ氏に話を聞き、またすぐに戻って事情を明確にした。調査官が説明に納得していたのは明らかだ」と強調した。

 問題となっているサプリメントの摂取が、規則で定められた許容範囲を超えていたかどうかの証拠は何も見つかっていない。一部の研究結果によると、L-カルニチンを直接血管に注射した場合、新陳代謝のスピードを促進して運動能力を向上させる効果があるとされている。(c)AFP