【2月21日 AFP】カナダで亡命申請を却下された中国人男性が、中国での新型コロナウイルス流行を理由に、深刻な危害を受ける恐れがあるとして本国送還に異議申し立てを行っていたことが明らかになった。カナダの裁判所は異議申し立てを却下した。

 この男性は、2004年にカナダに到着して亡命を申請し、トロントで暮らしていた曹若鵬(Ruepang Cao)さん(36)。

 曹さんは宣誓供述書で、亡命申請が却下され出国を命じられたことで、「致死性のウイルスがいまだ猛威を振るう流行の中心地へまっすぐ」送還されることに「恐怖と命の危険を感じる」と主張していた。

 カナダの法律では、送還先で危害を加えられる著しい危険があると裁判所が認めた場合、強制送還の手続きは中止される。

 カナダ政府は既に、新型ウイルス発生地の武漢(Wuhan)市と同市のある湖北(Hubei)省への送還は中止したが、中国国内の他地域は対象外だ。政府側代理人は法廷で、曹さんの送還先である広東(Guangdong)省は感染リスクが低いと主張していた。

 ロバート・バーンズ(Robert Barnes)裁判官は、政府の主張を支持し、「エビデンスに基づけば、中国の多くの地域では感染率・致死率とも低い」と指摘。「新型ウイルス感染者のほとんどについても、明るい見通しがある。従って(広東省に送還されることで生じる)リスクは、もしあるとしても、他のウイルス性疾患にかかるリスクよりそれほど高いとは考えられない。他のウイルス性疾患でも死亡する恐れはある」と結論付けた。

 カナダ国境サービス庁(CBSA)はプライバシー法を理由に、曹さんが当初の期日に送還されたかどうかは明かさないとみられるが、曹さんの代理人はAFPに対し、既に中国行きの航空機に乗せられたようだと述べた。(c)AFP