【1月29日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は28日、長きにわたり先延ばししてきたイスラエル・パレスチナ間の和平案を公表し、中東地域の「新たな夜明け」を約束した。ただパレスチナ側は、極端に偏った内容だとして和平案を拒絶している。

 トランプ氏は、ホワイトハウス(White House)でイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相と共に開いた記者会見で、中東和平案の概要を発表。「きょうイスラエルは和平に向けた大きな一歩を踏み出す」と言明し、「私のビジョンは双方にとってウィンウィンの好機となる。現実的な2国家解決で、パレスチナ国家がイスラエルの国家安全保障にもたらすリスクを解決するものだ」と説明した。

 和平案では、パレスチナ側の国家樹立の条件として、国家の「非軍事化」などの一連の厳しい要求を提示。約500億ドル(約5兆5000億円)の投資により現在のパレスチナが直面している窮状を解決できると同時に、イスラエル側の「安全保障が損なわれる」こともない未来像を描いた。

 トランプ氏は、前米政権による外交努力は漠然とし過ぎていたと批判。自身の和平案は80ページに上り、将来の2国家の領土案を示した地図も含まれていると指摘した。

 だがパレスチナ側は、和平案はイスラエルによるパレスチナ地域占領を正式に承認するものだと主張し、トランプ氏の発表を待たずに同案を全面的に拒絶していた。

 トランプ氏は、将来のパレスチナ国家は「地続きの」領土を持つことになり、ガザ地区(Gaza Strip)とヨルダン川西岸(West Bank)という2大人口密集地が広範なイスラエル支配地域を挟んで分離されている現状が解決されると約束。和平案ではさらに、イスラエルが将来のパレスチナ国家領土となる地域の開発を4年間凍結することを提案していると説明した。

 だが、公開された地図では、ヨルダン川西岸内には引き続きイスラエルに関連するユダヤ人入植地が散在し、ガザ地区とは道路トンネル1本のみでつながる状態になっている。和平案では、国際社会の大部分から違法な占領行為とみなされている入植地が今後も存続し、イスラエルは入植地をいつでも併合可能であることが明記されている。

 またトランプ氏は、イスラエルが今後もエルサレムを「分割されない首都」として保持し続けると表明。同時に、イスラエルの占領下にある東エルサレム内にパレスチナの首都を宣言することも認めると説明した。

 ガザ地区を支配するイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)は、和平案を直ちに拒否。ハマス幹部はAFPに対し、「エルサレムをパレスチナ国家の首都として認める以外の案は受け入れない」と述べた。

 パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長も、「この陰謀協定は認められないだろう。われわれの人民は、これを歴史のごみ箱に投げ入れることになる」と述べ、和平案は成立しないとの見方を示した。

 映像前半は中東和平案の概要を発表したトランプ氏とネタニヤフ氏。後半は公開された地図。28日撮影・提供。(c)AFP