【11月20日 AFP】銃声が響く中で逃げ出したカルロス・ビバンコ(Carlos Vivanco)さん(18)は、銃声のする方に顔を向けた。次の瞬間、左目の視界が暗くなり、顔から血が滴り始めた。

 反政府デモが続くチリでは、警察が発射したゴム弾などが目に当たって負傷する人が続出しており、中には失明したケースもある。チリの国立人権研究所(INDH)は、目を負傷した人の数を約200人と推定している。

■感じるのは「苦痛よりも怒り、恥辱よりも憎しみ」

 学生のビバンコさんが負傷したのは、デモが始まった最初の週、セバスティアン・ピニェラ(Sebastian Pinera)大統領が軍を動員した時だった。

 首都サンティアゴ近郊ラピンタナ(La Pintana)郊外の自宅で取材に応じたビバンコさんは、「彼らは私に苦痛や恥辱、後悔、恐怖を与えたがっていた」「だが、逆効果だった。銃を撃ち、人々に障害を負わせている相手に対しては、苦痛よりも怒り、恥辱よりも憎しみを感じる」と語った。

■ドラム演奏中に突然負傷

 建設作業員のセサル・カリョーソ(Cesar Callozo)さん(35)は、サンティアゴ中心部のイタリア広場(Plaza de Italia)でミュージシャン仲間とドラムをたたいている時に、右目を負傷した。

「とてもいい雰囲気だった。すると突然、何かが目に当たった感じがして地面に倒れた」。サンティアゴのサルバドール病院(Salvador Hospital)で診察の順番を待っていたカリョーソさんは、今にも泣き出しそうにそう言った。

「痛くて地面で少し身をよじらせていた。その後、痛みが弱まり、顔の感覚がなくなった。立ち上がって、私を打ち負かすことはできないと叫んだ」

 同じ部屋で、ネルソン・イトゥリアガ(Nelson Iturriaga)さん(43)も診察の順番を待っていた。イトゥリアガさんは、負傷した左目の視力が回復することを期待している。

 警察はこれまでデモの鎮圧に際し、催涙ガスや放水砲、ゴム弾などを使用してきた。だが、目の負傷に対する抗議の声が増す中、19日、鳥獣用散弾の使用中止を発表した。

  映像前半はビバンコさん、後半はカリョーソさん。11日撮影。 (c)AFP/Giovanna FLEITAS