【11月13日 AFP】日本海(Sea of Japan)上の漁船内で同僚の乗組員16人を殺害した北朝鮮人の男2人を、韓国当局が北朝鮮へ強制送還したことについて、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は13日、「極めて残虐な」司法制度を敷く北朝鮮に帰したことは国際法に違反すると非難した。

 韓国当局の調べによると2人は今月2日、船内で同僚の漁師16人を殺害して海に遺棄した後、その船で韓国へ逃亡。

 韓国当局は7日、この2人を南北を隔てる軍事境界線沿いの非武装地帯(DMZ)上にある板門店(Panmunjom)経由で、北朝鮮へ強制送還した。朝鮮戦争(Korean War)の休戦以降、韓国から北朝鮮へ強制送還が行われた初の事例となった。

 ヒューマン・ライツ・ウオッチは声明で、拷問される恐れがある北朝鮮へ2人を送還したことは国際法に違反すると指摘し、韓国当局が自国法にのっとり、容疑者として裁くべきだったと主張した。

 韓国の憲法下では、北朝鮮国民は自動的に韓国国民とみなされ、韓国領内に到達し脱北する意志を表明した北朝鮮人は通常、韓国にとどまることができる。

 野党・自由韓国党 (LKP)の羅卿ウォン(Na Kyung-Won、ナ・ギョンウォン)院内代表は、男2人は「脱北の明確な意志」を表明していたと指摘している。

 韓国メディアの報道によると、漁師の男2人は目隠しをされて板門店まで連行され、目隠しを外されたときには、目の前に北朝鮮の兵士が待ち構えていたという。韓国紙・朝鮮日報(Chosun Ilbo)は、男1人はその場で卒倒したと伝えている。(c)AFP