【10月18日 AFP】米アップル(Apple)の「iPhone(アイフォーン)」のアプリを通じて同性愛者になり、道徳的な害を被ったとしてアップルを相手取り訴えを起こしていたロシア人男性が、プライバシーの侵害を恐れ訴訟を取り下げた。男性の代理人が17日、明らかにした。

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 男性の代理人はモスクワの裁判所での非公開の1回目の裁判の後、「今日われわれは法的請求を取り下げた」と発表。裁判所で記者団に対し、訴えの中で「D. E. ラズミロフ(D.E. Razumilov)」とのみ明かされている原告は「訴訟をこれ以上続けることを望んでいない」と話した。

 代理人によると、ラズミロフ氏は「自身を批判する人から個人情報を特定」され、「アップル支持者からメッセージを受け取る」などネットで圧力を受けたという。同氏は自身が今後の裁判に出廷しなければならないことを考慮し、訴訟を取り下げることを決めた。

 訴状の写しによるとラズミロフ氏は今夏、iPhoneのアプリを通じて仮想通貨ビットコイン(Bitcoin)を注文したが、受け取ったのはLGBT(性的少数者)コミュニティー向けの仮想通貨「ゲイコイン(GayCoin)」で、「試しもせずに決めつけてはいけない」というメッセージが添えられていた。男性はその後、恋人だった女性と別れ男性と関係を持ち始めたが、これを恥じているという。

 ラズミロフ氏はアップルを相手取り100万ルーブル(約170万円)の損害賠償を求めていた。

 ロシアではホモフォビア(同性愛嫌悪)がまん延している。大都市には同性愛者のコミュニティーが存在するが、性的少数者(LGBT)の人権侵害やLGBTを標的とした攻撃の報道は絶えない。

 2013年には、未成年者に対する「非伝統的な性的指向の宣伝」を禁止する「同性愛宣伝禁止法」が制定され、LGBTの活動は実質的に違法となっている。(c)AFP