【10月4日 AFP】人間にはホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)を否定する権利があると主張したドイツのネオナチの政治家に対し、欧州人権裁判所(ECHR)は3日、そのような基本的人権は存在しないとの判断を下した。

 極右のドイツ国家民主党(NPD)に所属するウド・パステルス(Udo Pastoers)被告は、独北東部メクレンブルク・フォアポンメルン(Mecklenburg-Vorpommern)州議会議員だった2010年、議会演説でホロコーストが実際に起きたかどうかは疑問だと主張。ECHRによると、「いわゆるホロコーストは、政治的・商業的目的に利用されている」と発言したとされる。

 2012年、ドイツの裁判所でパステルス被告の有罪が確定。被告は判決を不服として、2014年にECHRに申し立てを行っていた。

 パステルス被告はドイツでの裁判について、自身の「表現の自由」が侵害されたと主張。また、上訴審の判事は下級審で有罪判決を下した判事の夫だったとして、「公平な裁判を受ける権利」も侵害されたとECHRに訴えた。

 しかし、ECHRの裁判官らは全会一致で、パステルス被告の「表現の自由」が侵害されたとの主張には「明らかに正当な理由がなく、よって申し立てを却下する」との判断を下した。

 さらに「公平な裁判を受ける権利」をめぐる主張についても、夫婦関係にある判事2人のいずれとも無関係の独立委員会が上訴を審理し却下しているとECHRは指摘。7人の裁判官のうち4人が侵害はなかったと判断し、申し立ては却下された。(c)AFP