【9月29日 AFP】日米が最終合意した新たな貿易協定について、両国政府は「ウィンウィンの合意」と強調しているが、日本国内の肉牛農家からは、さまざまな問題に苦闘する畜産業界にとどめを刺す結果になりかねないと危惧(きぐ)する声が上がっている。

 日本の肉牛農家は既に、環太平洋連携協定(TPP)と日欧経済連携協定(EPA)の2つの地域貿易の枠組みに適応することを求められ、苦悩している。だが、日米貿易協定がもたらす圧力はこれまでより大きくなると、畜産関係者は警戒感を強める。

「今までのTPP(メンバー国)だと、確かに輸入品は安いけれども、品質ではじゅうぶん対抗できる国だった」と、北海道・JA士幌(Shihoro)町畜産課の吉川晴美(Harumi Yoshikawa)さんは指摘した。「ところが、米国とは(オーストラリア産牛肉などと比べ)品質的にはより競合するので、その点では心配」

 北海道鹿追(Shikaoi)町で約4300頭の肉牛を飼育する大平畜産工業(Ohira Livestock Industry)の川合昭夫(Akio Kawai)社長(61)は、「政治の上のほうの人たちは、生産者のことなんか全然考えていない」と憤る。自分としては何とか経営を続けるつもりだが、「牛飼いなんてやめてやろう、と思う人たちは出てくるかもしれない」。

「国産牛はおいしいし、安心、安全でそれを選ぶ消費者もいるかもしれないが、(中略)米国産牛肉は圧倒的に安いから、それがいいという人たちもいる」(河合社長)