【9月24日 AFP】国際人権監視団体「グローバル・ウィットネス(Global Witness)」は24日、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領の下で、環境保護や土地権擁護を訴える活動家らが殺害される事件が急増していると報告し、ドゥテルテ氏の演説や政策が殺人者らを「勢いづかせている」と指摘した。

 フィリピンでは以前から、木材や採掘、果物栽培といった有力業界に立ち向かう活動家らが暴力にさらされ、死亡する事件が後を絶たないが、グローバル・ウィットネスの報告では、こういった殺人事件の件数が最近「憂慮すべき」増加傾向を示しているという。

 同団体は今年7月、フィリピンで昨年、土地権擁護活動家ら30人が殺害されたと発表。2012年にこの問題をめぐる報告活動を開始して以来、フィリピンが初めて同活動家らにとって世界一危険な国になったと指摘した。

 2016年半ばのドゥテルテ大統領就任を境に、その前の3年間に殺害された活動家は65人だったのに対し、それ以後は少なくとも113人に達しているという。

 グローバル・ウィットネスの活動家、ベン・レザー(Ben Leather)氏は、ドゥテルテ氏の活動家らに対する攻撃的な発言が、同氏の麻薬戦争に助長された、暴力に及んでも罰せられないという風潮と相まって、事態は悪化の一途をたどっていると述べた。

 国際社会から批判の的となっているドゥテルテ氏の麻薬取り締まり政策により、警察によって射殺された麻薬の密売人や使用者の数は、当局によると5500人以上とされる。ただ複数の人権団体が、実際の死者数は当局の推計の少なくとも4倍に上るとみている。

 グローバル・ウィットネスは、先住民が所有権を主張する土地で多国籍企業向けにパイナップルやバナナを栽培する農園経営者らが関わった事件を調査。

 報告書によると2016年には、ドール・フィリピン(Dole Philippines)向けのバナナ園の経営者に雇われた警備員らが、土地の所有権を主張する先住民の住居を破壊し、収穫物を奪った上、銃を発砲して先住民を追い出すという事件があったという。

 日本の伊藤忠商事(Itochu Corp)が傘下に置くドール・フィリピンにコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。(c)AFP/Cecil MORELLA