【8月17日 AFP】大規模デモで混乱が続く香港で今、大人気のポップアップ・ストアの店先に並ぶのは、流行の香港フードでもファッションアイテムでもない。市民の間で引っ張りだこの必需品──ヘルメットやゴーグル、ガスマスクといった防具だ。

 店主の李政熙(Lee Ching-hei)さん(33)の店「国難五金(National Calamity Hardware)」は、香港・九龍(Kowloon)半島側の旺角(Mong Kok)と大埔(Tai Po)の街角に、1日だけの出店を繰り返している。どちらも、2か月以上続く民主派デモの主な舞台となっており、警官隊との激しい衝突もしばしば起きている地区だ。

「開店から1時間でガスマスクは50~60個売れた。今日はもう売り切れだ」。デモの始まる間際の大埔に登場した店舗で、客にヘルメットをかぶせてやりながら李さんは言った。

 もともと広東語で「猪鼻子(ブタの鼻)」の通称で知られるガスマスクの熱心な収集家だったという。「だから、すごくたくさんの在庫があったんだ」

 学生たちには破格の最大9割引きで販売する。デモ参加者への防具提供を、商機としてだけでなく、若者らを支援する手段と捉えているからだ。当然、収支は赤字だが、「若者たちは死をも恐れていない。こっちも店の評判や金のことや倒産を心配している場合じゃない」と李さん。

 営業は1日単位で借りた貸店舗で行っており、出店の日時と場所はフェイスブック(Facebook)やデモ参加者が利用するチャットアプリ、テレグラム(Telegram)で知らせている。10日撮影。(c)AFP/Vivian LIN