【8月5日 AFP】王女らがここ数年、アラブ首長国連邦(UAE)から立て続けに脱出を試みている。3人目となったのはムハンマド・ビン・ラシド・マクトム(Mohammed bin Rashid Al-Maktoum)UAE副大統領兼首相・ドバイ首長(70)の妻、ハヤ妃(Princess Haya、45)だ。

 ハヤ妃は、ヨルダンのアブドラ・イブン・フセイン現国王(King Abdullah Ibun al-Hussein)の異母妹で、馬術のヨルダン代表選手としてオリンピックに出場した経歴を持つが、今年、英ロンドンの高等法院に、強制結婚からの保護措置を裁判所が命じる制度の適用を申請したことが明らかになった。

 UAEは、欧米に対し華やかで近代的な国家というイメージを植え付けようとしているが、ハヤ妃やマクトム氏の娘2人が逃げ出そうとしたことで、同国の人権問題に厳しい目が向けられていると活動家らは指摘する。

 2000年には、マクトム氏の娘であるシャムサ(Shamsa)王女が、英イングランドでの休暇中に側近らの目を盗んで逃げ出そうとした。だが、2か月後に見つけ出され、ドバイに強制的に連れ戻されたと伝えられている。

 また、2018年には、シャムサ王女の妹ラティファ(Latifa)王女がドバイから逃げ出そうとしたが、インド沖で捕えられたとみられている。

■偽善行為

 一連の出来事は、ドバイを中東の現代都市にしようと試みるマクトム氏の取り組みに泥を塗ることになった。

 ドバイは近年、石油資源依存から脱却し、世界から投資を集め、観光の中心地へと転換することで急速に発展している。

 ドバイは2018年11月、国際寛容サミット(World Tolerance Summit)を主催したが、これまで人権をないがしろにしていたことを考えれば、偽善極まりない行為だと人権団体から批判を浴びた。

 さらに、複数の人権団体が、法的根拠なしに政府に反対する人々を拘束しているとして非難している。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は7月、UAEは正規の登録をしているイスラム系政治団体の活動家ら少なくとも5人を、刑期を終えた後も拘束し続けていると指摘した。

 UAEの法制度の犠牲になっている個人や企業を支援する国際NGO「ディテインド・イン・ドバイ(Detained in Dubai)」はAFPの取材にこう語った。「ラティファ王女やハヤ妃の問題は、地域特有の欠陥を明らかにした。虐待に関する法律を整備しなければ、この問題はUAEの法制度の悩みの種となるだろう」。UAEの法制度の欠陥は「特に女性の人権に関して顕著だ」という。