【8月7日 AFP】食品業界では人工知能(AI)を活用し、フレーバー(風味)や香り、その他の要素の組み合わせへの理解を深め、売れ筋商品を誕生させようとする動きが加速している。五感を満足させる最高のレシピや、新たな風味の組み合わせが生まれるかもしれない。

 米IBMは今年、調味料メーカー大手マコーミック(McCormick)と提携するという驚きの発表を行った。同社はAIを活用して大量のデータを分析し、迅速かつ効率的に新しいフレーバーの組み合わせを予測する計画だ。

 両社の提携は、食品業界において、新商品の開発、消費者の好みへの対応、栄養と風味の改良にテクノロジーが割り込んできている現状を浮き彫りにした。

 ベルギーと米ニューヨークに拠点を持つスタートアップ、フードペアリング(Foodpairing)の共同創業者ベルナール・ラホース(Bernard Lahousse)氏は、同社は「世界最大のフレーバー・データベース」を持っており、人間の好みとデータ分析に基づいた食品予測が可能だと説明する。同社は自社で開発したデジタル・フード「マップ」とアルゴリズムを使って、お薦めの食べ物や飲み物の組み合わせを提案している。

 ラホース氏によれば、お薦めの食材の組み合わせの一つカキとキウイは、ベルギーの有名レストランの特製料理になったという。

 ニューヨークに拠点を置くアナリティカル・フレーバー・システムズ(Analytical Flavor Systems)は、AIを使ってフレーバーや香り、食感をモデル化したプラットフォーム「ガストログラフ(Gastrograph)」を開発し、食品や飲料に対する消費者の嗜好(しこう)の予測を行っている。

 例えば、分子分析に基づいた「フレーバー知能」マップを提供しており、これによるとスペインの塩漬けハムは「チーズ風味」または酸味が、ビートの根は「森林の香り」「キャラメル風味」があるという。

■農作物の育成にも活用

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らは、AIが風味の強いバジルの栽培に最適な生育環境を決定するのに役立つことを示した。他の作物にもこれを応用したいという。

 同大学の「オープン・アグリカルチャー・イニシアチブ(Open Agriculture Initiative)」代表、ジョン・デ・ラ・パーラ(John de la Parra)氏は、「AIによって、農作物の改良に必要な詳細で膨大な農業情報データの活用が、これまでにない速さで可能になった」と指摘した。

 一方、AIを使って食品をパーソナライズ(個々人の嗜好に合わせて最適化)するには大量の個人データが必要となるため、すぐには実現しないとデ・ラ・パーラ氏は指摘する。

「むしろ、近い将来実現する可能性が高いのは、消費者の動向や嗜好のトレンド予測へのAI活用だ」と述べた。(c)AFP/Rob Lever