【7月28日 AFP】国連人道問題調整事務所(OCHA)は26日、シリア北西部で続く空爆のため、4月末からの3か月間に40万人以上が避難したと明らかにした。

【写真】がれきに埋もれ妹をつかむ少女 SNSで話題に シリア空爆

 ミチェル・バチェレ(Michelle Bachelet)国連人権高等弁務官は、民間人の死者数が増え続けていることについて「国際社会の無関心」を強く非難。「週に数回、空爆によってかなりの数の民間人が負傷し、死亡している。そしてそれに対して、世間は肩をすくめるだけだ」と指摘した。

 バチェレ氏は、政府軍が北西部イドリブ(Idlib)県にある学校や病院、市場やパン製造所に攻撃を続けていると警告し、「これらは民間の施設だ。そして、このようにパターン化された攻撃を見る限り、これらが偶然空爆の被害に遭ったようには思えない」と指摘した。

 さらにバチェレ氏は、民間人に対する意図的な攻撃は戦争犯罪に当たると指摘し、「これらの攻撃を命じた者と実行した者は、自身の行為について罪の責任が問われる」とも主張した。

 英国に拠点を置く非政府組織(NGO)「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」によると、攻撃の急増によって民間人740人以上が死亡した。

 攻撃の矛先は、イドリブ県のほぼ全域と、隣接するアレッポ(Aleppo)県やハマ(Hama)県、ラタキア(Latakia)県の一部に向けられている。攻撃を受けている地域には約300万人が住んでいたが、半数近くが既に国内の別の場所に避難している。

 OCHAによると、最も避難者が多いのはイドリブ県南部とハマ県北部で、これら2か所は、攻撃の激化による被害が最も大きい地域だという。

 シリア政府と同盟関係にあるロシアと、反体制派を支援するトルコは昨年9月、イドリブ県に緩衝地帯を設置することで合意。同地域は、政府軍による大規模な攻勢から逃れられるはずだった。

 しかし現在、この地域は、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)傘下の組織を前身とする反体制派連合「タハリール・アルシャーム機構(HTS)」が支配している。HTSが緩衝地帯からの撤退を拒否したことで、ロシアとトルコの合意が完全に実行されることはなかった。

 政権側は、過去数週間で同地域への攻撃をさらに激化させている。複数の援助団体は、ここ数週間の悲惨な状況は8年目を迎えたシリア内戦の「悪夢」だとしている。

 映像は、政府軍の空爆に襲われた直後のイドリブ県南部アリハ(Ariha)。27日撮影。(c)AFP