【7月24日 AFP】エイズウイルス(HIV)の感染予防に、マッチ棒サイズの体内埋め込み型医療機器が革命的な変化をもたらす可能性があるとの研究結果が23日、発表された。初期の臨床試験では、この機器の使用により、潜在的に感染リスクの高い人々のHIV感染を最長1年にわたって防げることが示唆された。

 メキシコの首都メキシコ市で開催中の第10回国際エイズ学会(IAS)年次総会で臨床試験結果を発表した開発チームは、この機器について、ゆくゆくはHIV感染拡大を抑制するための新たなアプローチを提供する可能性があると主張している。

 埋め込み型の機器には「MK-8591」と呼ばれる分子が用いられる。MK-8591は現在市販されている薬剤の約10倍のHIV抑制効果を持ち、耐性発現に対する障壁が非常に高い。

 米製薬MSD研究所のウイルス学世界臨床開発部門を統括するマイク・ロバートソン(Mike Robertson)氏は、AFPの取材に対し「この医療機器は薬剤を徐々に放出し、体内の薬剤濃度を一定に保つ。予防的に投与すれば、実際に感染を防止することができる」と語った。

 現在のところ、HIV感染の危険性が高い人は、確実な予防に向けて錠剤を毎日服用しなければならない。

 国連(UN)は今月発表した年次報告書で、2018年の世界のエイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)関連死者数は約77万人で、2010年以降で3分の1減少していることを明らかにした。その一方で、新規感染率の低下は世界中で減速しており、東欧や中東を含む一部の地域ではその上昇が著しいと警告している。

 ロバートソン氏は、この新たな機器、もしくは同じ有効成分を含む月1回の錠剤により、HIV感染リスクの高い集団に対してさらに多くの選択肢を提供できるとの考えを示している。

「リスクが最も高い人々はさまざまな人口集団に属する。例えば欧米地域では、男性と性交渉を持つ男性は依然として新規感染率が最も高い集団となっている」

「だが世界では、エイズ罹患(りかん)率が最も高いのはサハラ以南アフリカの若い女性で、これも新規感染が最も多く発生している集団の一つだ」

 23日には、HIVワクチンの安全性と忍容性を評価する最近の臨床試験に関する最新の分析結果が発表された。

 第2相臨床試験はケニア、ルワンダ、米国で、健康で感染リスクの低いHIV陰性の成人を対象に実施された。初期の結果では、被験者のワクチン忍容性が良好であることが示されている。

 現在は第3相臨床試験の計画が進められている。(c)AFP