【7月23日 AFP】太陽系が位置する天の川銀河(銀河系、Milky Way)は100億年前に起きた「激しい衝突」で質量が4分の1の別の銀河を「丸のみ」にしたとの最新の研究論文が22日、発表された。この衝突の影響が完全に収まるまでに数十億年を要したという。

【写真】まるで万華鏡、天の川銀河の伴銀河の大マゼラン雲

 銀河系が二つの異なる恒星グループで構成されていることは過去の研究で示唆されていたが、銀河の合体がどのような時系列で発生したかについては議論が続いていた。

 スペイン・カナリア天体物理研究所(IAC)の研究チームは今回、「ガイア(Gaia)」宇宙望遠鏡を使って、太陽から6500光年以内にある銀河系内の恒星約100万個の位置、輝度、距離の正確な測定値を調べ、明確に異なる二つの恒星グループを特定した。一つは恒星の元素組成で重元素が少ない「青色」、もう一つは重元素を多く含む「赤色」の恒星グループだ。

 これらの恒星の運動と組成を詳しく調べたところ、それぞれのグループの星の年齢はほぼ等しいが、青色グループの恒星は「カオス的な運動」をしていることが分かった。これは、はるか昔に銀河系が、より小型の銀河をのみ込んだことを裏付けている。

 論文の筆頭執筆者のカルメ・ガヤルト(Carme Gallart)氏はAFPの取材に、「私たちの研究結果がこれまでにない点は、同化吸収された銀河に属する恒星の正確な年齢を測定し、その年齢を知ることによって、銀河の合体が起きた時期を割り出せたことだ」と語った。

 ガヤルト氏は、約100億年前に起きたこの衝突の影響は、長い時間をかけて広がったと考えられると説明。銀河衝突は、「自動車事故のようなものではなく、非常に緩やかなプロセスで、銀河系全体に影響を及ぼす。衝突は非常に大規模なため、人間にとってはゆっくりとしたものだが、宇宙の時間尺度ではそれほど遅いわけではない」と述べた。

「ガイア・エンケラドス(Gaia-Enceladus)」として知られる矮小(わいしょう)銀河の残骸は、最終的に現在の銀河系のハロー(銀河系本体を球状に取り巻く大構造)を形成したと研究チームは推測。また、銀河の衝突は、それから40億年ほど続いた「爆発的な」星形成活動の一因となったとしている。星形成で生じたガスはその後、銀河の中央を走る「銀河円盤」内にとどまったという。

 論文は、英科学誌ネイチャー・アストロノミー(Nature Astronomy)に掲載された。(c)AFP