【7月27日 AFP】韓国人のクリスティン・ジョン(Christine Jung)さん(37)は、職場で数か月にわたり嫌がらせを受け続けた。ついに加害者と対決することにしたが、解雇され、雇用主から名誉毀損(きそん)で訴えられた。

 韓国では伝統的に、権力者による虐待行為は知らぬふりをすることになっており、ジョンさんのような状況に置かれることは珍しくない。あまりにもこのような虐待行為が多いため「カプチル(パワハラの意味)」という新たな言葉もつくられたほどだ。

 最近の政府の調査によると、労働者の3分の2が職場で嫌がらせを受けたことがあり、80%が嫌がらせを目撃したことがあると回答している。

 だが、今月施行された改正労働法によりこうした慣習が変わる可能性が出てきた。改正法では、嫌がらせを受けたと主張する従業員を不当に降格させたり、解雇したりした会社の経営者に対し、禁錮3年または最高3000万ウォン(約275万円)の罰金を科す罰則が盛り込まれた。

 同国の経済は、同族経営のコングロマリット(複合企業)が支配しており、これが厳格な上下関係や仕事をめぐる激しい競争、肩書への固執など有害な職場環境の形成に寄与している。

 ジョンさんに嫌がらせをしたのは、最高経営責任者(CEO)の父親だった。

 ジョンさんはAFPの取材に対し、「私が『太りすぎ』なので歩くたびに建物が揺れると言われた。女性用トイレまでついて来ようとしたことや、事務所で突然おなかをまさぐられたこともある」と語った。「だが、私がその問題を取り上げると、経営陣は私のことを男嫌いのうそつき呼ばわりした」

 ジョンさんは昨年、ついに雇用労働省に訴えたが、嫌がらせの加害者は「実質的に毎日」会社に来てはいたが、ジョンさんの上司でも、会社の社員でもないため、職場でのいじめには該当しないと言われたという。