【7月14日 東方新報】SMAPや嵐(Arashi)をはじめ多くの人気男性タレントを生みだしたジャニーズ事務所(Johnny & Associates)社長のジャニー喜多川(Johnny Kitagawa)さんが9日に87歳で死去して以降、中国メディアで関連の報道が相次ぎ、ネット上では「J家(ジャニーズ)」ファンからの追悼・感謝の書き込みが止まらない。一方で、事務所の先行きを心配する声もある。

 死去について、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報(Global Times)のウェブサイトは「木村拓哉(Takuya Kimura)ら国民的アイドルを育て上げた」と見出しをつけて速報。ネットでは「一路走好(安らかに)JOHNNY桑(sang、訳注:日本語の「さん」に相当)」「謝謝(ありがとう)喜爺爺(喜おじいさん)」と愛情を込めた追悼・感謝の言葉が相次いだ。

 木村さんが中国版ツイッター「微博(Weibo)」で「ジャニーさんはずっと走り抜きました。ゆっくりと休めることを願っています」と中国語で投稿したことも大きな反響を呼んだ。12日にジャニーズ事務所所属タレントらによる「家族葬」が行われると、ネットでは、ろうそくや両手を合わせた絵文字とともに哀悼の意を表したコメントが並んだ。

 中国では、SMAPや嵐をはじめジャニーズのタレントが長く人気を集めてきた。アイドル文化やグループで歌うスタイルが少ない中国において、10代の「イケメン」グループが華麗なダンスを披露しながらセンスの良いポップスを歌う姿は大きなインパクトを与えてきた。そのアイドルが年を重ねながら映画やバラエティーに活動の幅を広げていくと、ファンもともに「成長」を遂げてきた。

 中国のネットでは、日本の人気テレビ番組が半日もすると中国語の字幕付きで海賊版がアップされる。もちろん違法行為なのだが、日本にいる中国人留学生と大陸に住む中国人が連携した「字幕組」が翻訳・制作しており、ジャニーズ系の番組は特にアップ数とアクセス数は高い。その中でも元SMAPのメンバーに関しては、「中居正広(Masahiro Nakai)さんの番組だけの字幕組」「香取慎吾(Shingo Katori)さんだけの字幕組」というように細分化しているほどの人気だ。

 2011年5月には、日中韓サミットのため来日した当時の中国・温家宝首相(Wen Jiabao)に、日本人アーティストとして初めてSMAPが会見。その年の9月、SMAPはデビュー20周年にして初の海外公演として中国・北京でステージに立ち、会場から「アイシテルー!」と日本語の声援も飛び交った。紆余(うよ)曲折のある日中関係で、ジャニーズのタレントは友好の懸け橋となってきた。

 ジャニーズのアイドルが東京ドーム(Tokyo Dome)で公演する際、ドーム周辺で何百人ものファンが「チケットが余った方、お譲りください」と書いた紙を手に、立ち続けている姿を見たことがある人もいるだろう。その中に「私は中国から来た。チケットください」と、たどたどしい日本語を書いた中国人女性も何十人もいる。中国のジャニーズファンのサイトでは「チケットがなくても、ドームに行って日本人ファンに譲ってもらった」という書き込みがあり、それを信じて国際線の旅客機に乗り込み、日本に来るファンが後を絶たない。実際にチケットを譲ってもらえる確率はほとんどないのだが、コンサートが始まった後もドームの外に立ち続け、漏れ聞こえる音楽に耳を傾け、「憧れのアイドルの近くにまで来られた」と感激して帰国するファンもいる。そうしたアイドルの「育ての親」であるジャニーさんへの感謝は、尽きることがないわけだ。

 ただ、中国で日本のアイドルが安泰かというと、必ずしもそうではない。近年は中国でも「韓流」が席巻。韓国人の男性スターは中国語を覚えて中国のバラエティー番組などにも出演しており、10代や20代の若い中国人女性は韓流ファンが増えてきているのが実情だ。また、「中国初の国産少年アイドルグループ」といわれる「TFBOYS」が2013年に登場するなど、中国人アイドルも増えてきている。

 中国でジャニーズファンの年齢層は高くなっている。ネット上では「ジャニーさんが亡くなり、これから日本でジャニーズのタレントの勢いはどうなるのだろう」と心配する書き込みもある。ジャニーさん亡き後の事務所の行方に、中国人ファンも注目している。(c)東方新報/AFPBB News