【7月7日 AFP】イベリア半島南端の英領ジブラルタル(Gibraltar)自治政府は4日、欧州連合(EU)の制裁に違反してシリアへ原油を輸送していた疑いがあるとしてイランの石油タンカー1隻を拿捕(だほ)したことを明らかにした。イラン政府は5日、タンカーを直ちに解放するよう英国に要求。イラン側は、タンカーの拿捕は米国の指示を受けての行為だったと非難している。

 ジブラルタルの警察と税関当局は4日早朝、英海兵隊の支援を受けて全長330メートルのタンカー「グレース1(Grace 1)」を拿捕。当局は、タンカーが欧州連合(EU)の制裁に違反してシリアへ原油を輸送していた疑いがあるとみている。

 タンカーが拿捕されたのは、ジブラルタル南方沖4キロの地点。ジブラルタル側は同域を英国の領海とみなしているが、ジブラルタルの領有権を主張するスペインは、同域はスペインの領海だとしている。一方でイランは、同船が航行を阻止されたのは、公海上だったと訴えている。

 イラン外務省によると、ロブ・マケア(Rob Macaire)駐イラン英大使を呼び、同省高官が「英国の今回の動きは容認できない」と延べて正式に抗議したという。

 さらに「これまでに入ってきている情報に基づけば、タンカーの拿捕は米国の求めに応じたものであり、同船を直ちに解放するよう要求した」としている。

 イランが今月1日、2015年の主要国との核合意で定められた濃縮ウランの貯蔵量の上限を超過したと発表したことを受けて、EUは対応の検討を余儀なくされ、双方の関係は不安定になっていた。

 イランの主要な諮問・仲裁機関である公益判別会議のモフセン・レザイ(Mohsen Rezai)議長は、英国が同船を解放しない場合、イランは「それに相応する措置として、英国の石油タンカーを拿捕せざるを得ない」と警告した。

 映像は6日にジブラルタル沖で撮影されたタンカー。(c)AFP