【6月25日 AFP】メキシコのルイス・クレセンシオ・サンドバル(Luis Cresencio Sandoval)国防相は24日、米国境沿いに1万5000人近くの兵士と国家警備隊員を派遣したと発表した。国境を越えて米国に入ろうとする移民を拘束する政府方針が批判を浴びている中、国防相は治安要員が移民を拘束していることを認めた。

 メキシコから流入する移民の阻止を要求するドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領からの圧力を受けて、メキシコ政府は今月に入り、南部国境に6000人規模の国家警備隊を派遣すると約束した。しかしメキシコ政府はこれまで北部の対米国境における移民取り締まりの規模については公表してこなかった。

 アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)大統領と共に記者会見したサンドバル国防相は「(正式書類のない)国家間の移動は犯罪ではないが行政違反行為だ。従って彼らを拘束して(入国管理当局に)引き渡す」と述べた。

 これまでメキシコの治安当局は、国内を移動中の移民を拘束してきており、移民が国境を越えて米国に入るのは阻止しないのが通例だった。新方針は従来方針からの転換だと言える。

 先週シウダフアレス(Ciudad Juarez)からリオグランデ(Rio Grande)川を渡り、米国に入国しようとした女性2人と少女1人が、重武装した国家警備隊員によって強制的に阻止されるところを撮影したAFPカメラマンの写真をきっかけとして新方針に批判が集まっていた。

 移民の家族のうち数人がどうにか川を渡ったものの、残りがメキシコ国内で拘束されるなど、家族が引き裂かれる事例も発生している。

 中米諸国からの移民らは、長引く貧困とギャングの暴力から逃れるために母国を離れメキシコを縦断して米国に行こうとするが、ほとんどの場合、合法的に移動するための書類を持っていない。

 書類を持たない移民が他国で難民申請するために国境を越える権利は国際法で保護されている。また米国の裁判所も、すべての移民が国境検問所、あるいはそれ以外のどこからでも国境を越える権利を有することを支持している。

 米当局は今年5月、前月(4月)比32%増、前年同月比278%増となる14万4000人の移民を国境沿いで拘束した。この14万4000人に含まれる家族数は8万9000で、過去最高を記録した。

 トランプ氏はメキシコ政府に移民数を減らすためさらなる手段を講じるよう要求している。(c)AFP/Yemeli ORTEGA