【6月24日 MEE】トルコとの国境付近にある小さな町アルマナーズ(Armanaz)は、シリア内戦で多くの戦死者を出したイドリブ(Idlib)県の中心部に位置する。だが住民のロバ・ガナム(Roba Ghanam)さんの不安は、内戦の他にもある。それが始まったのは数年前、息子のアイハム君(8)が言葉を発さず他の人々と交流しないことに気付いた時だった。またアイハム君は寝ていることが多く、幸せそうに見えなかった。

 アイハム君は3歳から医師の診察を受けるようになったが、シリアでの自閉症の認知不足が障壁となった。最終的に、ハマ(Hama)県北部の医師から自閉症と診断された。「シリアでは大きな問題があります。特に自閉症や特殊ニーズに対する認知という点で」とガナムさんは言う。

■ケアが不足するイドリブ

 イドリブ県から避難した人たちの中には、医療従事者らもいる。専門施設を含め、数百の病院や保健所が攻撃を受けた。県内の一部地域では今年の5月8日までに、10以上の支援団体が戦闘を理由に活動を中止した。このためガナムさんのような保護者らは、子どもに対する支援を満足に得られなくなった。

 首都ダマスカス近郊グータ(Ghouta)地区出身のハムザ・ハシム(Hamza Hashim)医師は、同地区が政府軍に掌握される前に故郷を離れ、昨年にイドリブ県で診療を始めた。現在はアイハム君のような患者を診察する病院で勤務している。「残忍な爆撃が続く現在の安全状況によって人々は恐怖に襲われており、問題は深刻化している」(ハシム医師)

■学校で孤立

 イドリブ市に住むハレド・アシ(Khaled Ashi)さん一家では、子ども3人のうち14歳のアラー君に自閉症がある。アシさんは、自閉症への認識不足のためにアラー君が周囲から粗末な扱いを受けることが多いと感じている。アシさんによると、アラー君の学校は現在、戦闘のせいで休校しているが、アラー君は学校に通っていた時、一人きりで過ごすことが多く、他の子たちと交流しなかった。

「息子のような子どもの場合、仲良くなるためには常にそばにいて、いろいろなことを何度も一緒にする必要があります」とアシさんは言う。「特別な学校や、安全な医療施設も利用できない状況です。ここには何もありません。あるのは爆撃と死だけです」