部門賞 情報社会セクション 「日常の併存」
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リビア紛争地域の軍事基地で、休憩中の軍人達が世界的に人気のあるバトルロイヤルゲームをプレイしている。彼らが見つめているスマホの画面のすぐ側に置かれた拳銃が否応なしに目に飛び込んでくる。私達にとっても身近なスマホゲームをプレイする姿と、その背景にある紛争のギャップに衝撃を受け、この写真を選定した。写真に映った彼らにとってはスマホゲームをプレイするのも、机の上の銃を持って戦いに行くのも、どちらも同じ日常であるのだろうと感じ、情報社会の拡大と未だなくならない紛争を視覚的に同時に訴えるインパクトのある写真だと考えた。
早稲田大学 古川 真優 情報社会セクション
[講評] 羽場久美子(青山学院大学国際政治経済学部教授)
ぞっとする写真だ。選者は、「私たちにとっても身近なスマホのバトルロイヤルゲームとその背景にある紛争のギャップに衝撃」と書かれている。しかし現代の戦争は、「きれいな戦争」といわれ、バトルゲームと、現実のバトルは、ほとんど差はない。
特に先進国の軍隊兵士は、画面を見ながら爆撃したり無人ドローンから攻撃したりするといわれる。良心的な(心の柔らかい)兵士や軍人はそれでも精神を病んで自殺する人が後を絶たないが、その銃剣や爆弾の先にいるのは、がれきの上で遊ぶ幼児や、畑で仕事をする女性や子供たちだ。情報社会は、戦争の仕方まで変えてしまった。先進国の情報技術が死を簡単にゲームのように変えてしまった恐ろしく闇の深い写真である。選者の鋭い視点も素晴らしい。