【6月18日 AFP】国連(UN)は17日、2017年にミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)が大量に難民化した事態に至る過程で、国連に「組織的な対応不備」があったとする報告書を発表した。報告書は同国のアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問にも言及し、同氏の存在が対応に不備を生じさせた一因だったとも指摘した。

 ロヒンギャ問題に対する国連の対応をめぐっては、ミャンマーで活動していた国連職員らがロヒンギャに対する襲撃の前兆を無視したとする批判が上がり、アントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は今年2月、内部調査を命じていた。

 2017年に始まったミャンマー軍による弾圧により、大量のロヒンギャが同国北部ラカイン(Rakhine)州から隣国バングラデシュへと避難。今も約74万人が難民キャンプにとどまっており、国連は一連の軍の対応を「民族浄化」と非難している。

 グアテマラのベテラン外交官ゲルト・ローゼンタール(Gert Rosenthal)氏が執筆し、国連加盟国に公開された36ページに及ぶ報告書は、「組織的な対応不備の責任を特定することは難しい」が、「重大な人権侵害に関する国連の原則に基づいた懸念をさらに強く伝えること」を怠った点については全当事者に「共同責任がある」と指摘している。

 ロヒンギャ問題で国連へ向けられた批判の一部は、当時ミャンマー国連常駐・人道調整官だったレナタ・ロック・デサリエン(Renata Lok-Dessallien)氏がロヒンギャに対する弾圧激化への懸念を軽視し、ミャンマー政府との経済協力を優先したとされる点に集中しているが、国連はこうした批判を否定している。

 しかし、今回の報告書では「国連の組織内部に結束よりむしろ分裂の力学があった」こと、「明確で統一された戦略」や「現地からの体系的で一元化された情報分析」が欠如していたことに非があったと認めている。

 ローゼンタール氏はまた、国連が「収集したデータや情報、さらにはリアルタイムでの現地の状況分析を向上・体系化し、共有する必要がある」と指摘。また、「異なる方面の異なる解釈」があった場合にはそれらを共有し、理解に努める必要があると記している。

 さらに国連の対応に不備が生じた原因として、ローゼンタール氏はミャンマーの民主化指導者だったアウン・サン・スー・チー国家顧問に言及しつつ、「国連側に当初(ミャンマーの)政権移行に陶酔していた部分があり、それはアウン・サン・スー・チー氏の名声がほとんど伝説的な域に達していたことに少なからず基づいている」と指摘した。(c)AFP/Philippe RATER