この写真は、飛べない鵜がごみに囲まれた自分の巣に座っている様子を写しています。このごみは遠い場所から運ばれてきた人間によるごみです。人間は、自然では循環しない物質を多く生み出し、環境を大きく破壊しています。例えば、この写真に写っている多くのプラスチックは海で分解されるまでに何年、何十年、何百年とかかり、その間海を汚し続けるのです。こういった環境破壊により海の生物たちは苦しめられてきました。この飛べない鵜はどうでしょう。自分の住処がごみだらけになり苦しめられています。きれいな海を優雅に泳いでいた頃とは違い、今はごみの漂う海でプラスチックなどを飲み込んでしまうリスクと隣り合わせで生きています。そう考えながら写真を見ると、この飛べない鵜は、自分の羽ではこのごみだらけの巣から飛び立ち頭上を過ぎる海鳥のように自由に飛び立つことができないことを嘆き叫んでいるのではないかと思えてきました。それとともに、こうした環境問題に取り組む責任が自分たちにあると強く認識しました。(ペンネーム:ほー)

明治大学 環境セクション

[講評] 羽場久美子(青山学院大学国際政治経済学部教授)
この写真はまさにわれわれの何気ない日常の中で、大量に排出するプラスチックごみという、燃えないゴミが、太平洋に浮かぶ島々、また世界中の豊かな島々や波打ち際にすむ鳥や環境・生態系を破壊し、それらは何百年もの間、地球環境を汚し続け、地球全体に負の影響を与え続けるという事実だ。
飛べない鵜が、ごみの中で卵を守りつつ、翼を広げて威嚇する叫び声は、私たちのプラスチックごみに対する無批判な日常を切り裂く叫び声のように聞こえる。選者の、飛べない鵜に対する辛く温かい思いと、合わせて私たちの責任を問う姿勢も高く評価できる。
同じ写真を選んだ人は2人いましたが、分析力でこちらを選びました。
もう一つ「次世代への負の遺産」、ごみの山の中を歩く、幼児たちと、ごみを片付けるボランティアの人たちの活動の写真も心に残るものでした。上記の鳥の巣もどちらも、海のそばであり、私たち先進国の国民が毎日今でも大量に消費し捨て去るゴミがきれいな自然を壊しそこに住む生き物や人々を汚染している、それを告発する優れた写真と選者の目を感じました。