【6月11日 AFP】2017年に史上最高額の4億5000万ドル(約490億円)で落札された後、所在不明となったレオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci)作とされる絵画「サルバトール・ムンディ(救世主、Salvator Mundi)」について、サウジアラビア皇太子の大型ヨットにあるとの寄稿が10日、美術品市場ニュースサイト「アートネットニュース(artnet News)」に掲載された。

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 サルバトール・ムンディの所在は美術界屈指の謎となってきたが、ロンドンを拠点とする画商、ケニー・シャクター(Kenny Schachter)氏は寄稿で、同作はサウジで強い権力を持つムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)のヨットにあると主張している。

 サルバトール・ムンディは、暗闇を背景にしたイエス・キリストが左手に透明の球体を持ち、右手で世界を祝福する姿を描いた作品。2017年に競売大手クリスティーズ(Christie's)で落札されて以降、一般公開されていないことから、その所有者や所在、本当の作者について疑問の声が上がっている。

 同作をめぐっては、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)を皮切りに、サウジのバドル・ビン・アブドラ・ビン・ムハンマド王子(Prince Badr bin Abdullah bin Mohammed)がムハンマド皇太子の代理として落札したとの報道がなされており、サウジ政府はこれを肯定も否定もしていない。

 AFPには、シャクター氏の寄稿の裏付けは取れなかった。また、国際美術品取引には不透明性が付きまとう上、同氏自身も「中東の濁った水の中では、本当に明瞭なことなどない」と書いている。

 しかし、シャクター氏はサルバトール・ムンディの売買に関わった2人を含む情報筋の話として、同作は「夜中にMBS(ムハンマド皇太子)の飛行機で運ばれ、彼のヨット『セリーン(Serene)』号に移された」としている。

 同氏は、サルバトール・ムンディはもともと断片化された状態で発見され、オークションの前に修復する必要があったと指摘した上で、「何かの拍子に海水がかかったとしたら、どんな損傷が起こり得るだろうか」と問い掛けている。(c)AFP