【6月6日 AFP】人が飲食や呼吸を通じて体内に取り込むマイクロプラスチック(プラスチック微粒子)の量は、最大で年間12万1000個に上るとする研究結果が5日、発表された。プラスチックごみが人体に直接どのような影響を及ぼし得るのか、改めて懸念される内容だ。

 マイクロプラスチックは合成繊維やタイヤ、コンタクトレンズなどの製品が分解された際にも生じる極小プラスチック片で、深海から高山の氷河まで、今や世界で最も普遍的に存在する物質の一つと化している。

 これまでの研究では、食物連鎖にマイクロプラスチックが侵入する過程が明らかになっており、主要ブランドのボトル入り飲料水のほぼ全てにマイクロプラスチックが混入していることも昨年、判明した。

 今回、カナダの研究チームはマイクロプラスチック汚染に関する数百件のデータを分析し、米国人の一般的な食生活や消費習慣と比較。成人男性の場合、1年間に1人当たり最大5万2000個のマイクロプラスチックを体内に取り込んでいるとの試算を導き出した。

 呼吸の際に空気中に漂うマイクロプラスチックを吸い込んでいる点を考慮すると、体内に取り込まれる量は年間12万1000個に上り、1日当たり320個を超えることも分かった。

 また、ボトル入り飲料水のみを飲んでいる人は、年間で9万個多くマイクロプラスチックを取り込んでいる恐れがあるという。

 ただし研究チームは、米学術誌「エンバイロメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジー(Environmental Science and Technology)」に掲載された論文の中で、これらは試算値である点を強調し、個人が取り込むマイクロプラスチック量は居住環境や食生活に大きく左右されると述べている。

 また、取り込んだマイクロプラスチックが人体に及ぼす影響も、まだ理解が十分進んでいない分野だと研究チームは指摘。その上で、直径130ミクロン未満のマイクロプラスチックは「ヒト組織の内部に入り込み、局地的な免疫反応を引き起こす恐れがある」との見方を示し、「人が体内に取り込むマイクロプラスチック量を減らす最善策は、プラスチックの生産・使用量を減らすことだろう」と結論付けている。

 一方、今回の研究には関わっていない英イーストアングリア大学(University of East Anglia)のアラステア・グラント(Alastair Grant)教授(生態学)は、この研究で特定されたマイクロプラスチックが「人体の健康に著しい危険」をもたらす証拠はないと述べた。特に、空気中のマイクロプラスチックのうち1種は吸い込むには大きすぎるため、実際に肺まで達する量は言及されているよりずっと少ないだろうとしている。(c)AFP/Patrick GALEY