【6月2日 AFP】進行性乳がんに罹患(りかん)した閉経前の女性患者の治療でホルモン療法に加えて新治療薬「リボシクリブ(ribociclib)」を用いたところ、生存率の劇的な改善がみられたとする臨床試験結果が1日、米シカゴで開かれた米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次会合で発表された。

 治験対象となったのは、59歳未満で閉経前の女性672人。いずれもステージ4の進行乳がんと診断されていたがホルモン療法は受けていなかった。

 これらの女性患者に、ホルモン療法とリボシクリブ投与を併用したところ、3年半後の生存率が70%に上昇。リボシクリブを投与された患者の死亡率は、無作為に選ばれた偽薬(プラセボ)投与患者よりも29%低かった。

 リボシクリブは、スイス製薬大手ノバルティス(Novartis)が開発したサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害薬で、「Kisqali」の製品名で知られる。

 論文主筆者サラ・ハービッツ(Sara Hurvitz)氏は臨床試験について、乳がんの中でも女性ホルモン「エストロゲン」の影響で増殖するタイプのものが対象だと説明。若い女性の乳がん患者では3分の2がこのタイプのがんで、治療にはエストロゲンの産生を抑えるホルモン療法が一般的だ。

 ハービッツ氏は、「ホルモン療法と共に(リボシクリブなど)CDK阻害薬の一種を追加で用いれば、相乗効果やより効果的な反応やがん細胞破壊が得られる」との見解を語った。

 CDK阻害薬は、がん細胞の増殖を活性化させる酵素の働きを阻害する効果がある。がん細胞のみを標的としているため、従来の化学療法に比べて体への負担が少ない。

 20~59歳の米国女性では進行がんが主な死因となっている。2019年の新たな乳がん患者は26万8000人と予測されている。(c)AFP/Issam AHMED