【6月2日 AFP】世界的な経済成長を遂げ、テクノロジー先進国として世界で初めて第5世代移動通信システム(5G)を国内全土に導入した韓国。だが、これは比較的最近の変化であり、こうした目覚ましい発展の背後には、読み書きができないまま取り残された高齢者が多くいる。

 20世紀前半の朝鮮半島南部(現在の韓国)は農業を主要産業としていた。発展が遅れていた朝鮮半島の中でも人々の生活は半島の北側(現在の北朝鮮)よりも貧しく、多くの子どもたちは一度も学校に通えなかった。

 そのまま数十年を経て年を取った韓国人高齢者たちが今、ようやく読み書きを学び始めている。中には、読み書き教室で書いた文章が書籍として出版された例もある。

 韓国の生涯学習推進機関「平生教育振興院(National Institute for Lifelong Education)」の2017年調査によると、80歳以上の韓国人で読み書きができない非識字者は67.7%に上る。中でも女性の非識字率が高くなっている。韓国は数世紀におよぶ家父長制社会で、急速な工業化が始まった20世紀半ばになってからも、女児を学校に通わせない家庭が多くあった。

 韓国南部・順天(Suncheon)の図書館でそうした女性たちを対象に開かれている文章教室では、20人の高齢女性たちが学んでいる。この日は57~89歳の女性たちが机に並んで座り、ペンを手に母親の思い出を言葉や絵で表現していた。

 生徒の一人、チャン・ソンジャ(Jang Seon-ja)さん(75)は「祖母はよく、学がある女は反抗的になると言っていました。だから私を学校に通わせてくれなかったんです」とAFPに語った。男児であろうが女児であろうが、子どもの教育を徹底的に重視する今の韓国家庭とは極めて対照的だ。現代の子どもたちは放課後も学習塾で長時間勉強し、最高の人生をつかむチャンスを得ようと大きなプレッシャーと競争にさらされているのだ。

 順天の文章教室が始まったのは3年前。今年の2月には、参加女性たちが共同で書き上げた回想録集「書き方は知らなくても生き方は知っていた」が出版された。動乱の韓国現代史の生き証人である女性たちの回顧録集は7000部以上売れた。

 回顧録集の英語版の出版を計画しているという図書館長のナ・オクヒョン(Na Ok-hyeon)氏によれば、販促目的で行った米国訪問には作者の女性たちから3人が同行したという。(c)AFP/Kang Jin-kyu