【6月1日 AFP】フォーミュラワン(F1、F1世界選手権)のブラジルGP(Brazilian Grand Prix)開催権をめぐり、同国では経済面と政治面での権力争いが激しくなっている。同GPは1973年にサンパウロ(Sao Paulo)市のインテルラゴス・サーキット(Interlagos Circuit)で初開催され、1990年からは同地で毎年行われてきたが、来シーズンをもって契約が切れることになっている。

 この問題をめぐる決断は、F1にとって複雑かつ重要なものになる。世界で最もF1人気が高いブラジルでは、2018年シーズンの各GPで1億1520万人に上る視聴者を引き付けており、中国の6800万人と米国の3420万人を大幅に上回っている。

 そうした中で今月8日には、ブラジル・リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)市議会議員の経験を持つジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領が、同国GPを「来年」から同市で開催し、サーキットを「6、7か月で建設」すると大々的に発表した。

 これを受けてF1の興行主は即座に、レースは2020年もサンパウロで行われる予定であり、リオ市は2021年以降の候補地にすぎないと強調。ブラジルのコンソーシアムであるリオ・モータースポーツ(Rio Motorsports)のJR・ペレイラ(JR Pereira)最高経営責任者(CEO)も、「大統領チーム側との打ち合わせにおける伝達ミス。現実的に建設期間は16~17か月の予定」と話している。

 サンパウロ州のジョアン・ドリア(Joao Doria)知事もまた、ブラジルGPの開催地が移転することはないとしており、「ブラジルGPは2020年もインテルラゴスで開催される予定であり、それ以降もここにとどまる」「リオがサンパウロと競い合うつもりなら、サンパウロが勝つ可能性が高いのは間違いない」と述べた。

 ブラジルGPのリオプロジェクトはかなり大掛かりなものとなっており、サーキットの観客席はインテルラゴスの倍以上に当たる13万を誇るという。さらに、設計者はドイツ人技師のヘルマン・ティルケ(Hermann Tilke)氏で、「ティルケドローム(Tilkedromes)」と呼ばれる独ホッケンハイム(Hockenheim)をはじめとした、上海インターナショナルサーキット(Shanghai International Circuit)やセパン・インターナショナル・サーキット(Sepang International Circuit)のデザインで知られている。

 また、予算は6億9700万レアル(約192億円)と見積もられており、そのすべてが民間企業から融資される見通しであるという。

 ブラジルを代表するモータースポーツのニュースサイト、グランデプレミオ(Grande Premio)のディレクターを務めるビクトル・マルティンス(Victor Martins)氏は、「サッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)や2016年のリオデジャネイロ五輪でも同じ宣伝文句を聞かされた。結局は公的資金が使われることになるだろう」との見解を示した。

 マルティンス氏は、「結局のところは政治的な腕相撲にすぎない」とすると、市と州の政治家が「権力を誇示しようとしている」と述べた。また、ドリア知事がボルソナロ大統領の対抗馬として2022年の大統領選挙に出馬する計画があるのは明らかだと付け加えた。(c)AFP/Louis GENOT