【5月28日 AFP】米国の対メキシコ国境沿いで先週末、一人の退役軍人の主導で民間による壁建設が始まった。事業費はドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の支持者からクラウドファンディングで募った資金で賄われている。

 この事業はニューメキシコ州に住む退役軍人、ジェフ・アレン(Jeff Allen)さんによるもの。アレンさんは「米国を再び偉大に」と書かれた帽子をかぶり、重機によって巨大な鉄格子状の障壁が建ち始める様子を誇らしげに見届けた。

 建設現場があるのは、メキシコ北部シウダフアレス(Ciudad Juarez)と境を接する米ニューメキシコ州サンランドパーク(Sunland Park)で、敷地はアレンさんが共同所有する土地。サンランドパークはテキサス州エルパソ(El Paso)に近く、障壁は両州がメキシコ国境と接する地点に建てられる。

 アレンさんは、メキシコ国境に「大きく美しい壁」を建てるというトランプ大統領の公約実現に協力することを決意。国境付近で自発的にパトロール活動を行っている右翼武装集団「憲法愛国者連合(United Constitutional Patriots)」と共に、一部を自ら実行する意志を固めた。

 アレンさんによると、事業資金は、三肢を切断した退役軍人ブライアン・コルファージ(Brian Kolfage)さんが創設した企業「ウィー・ビルド・ザ・ウォール(We Build the Wall)」が提供している。

 コルファージさんは「We The People Will Fund The Wall(われわれ大衆が壁の費用を提供する)」と銘打ったインターネット上での資金調達活動を通じ、数百万ドル(数億円)の個人寄付を調達。この資金で同社を立ち上げた。同社の顧問には、トランプ政権の首席戦略官だった右派の戦略コンサルタント、スティーブ・バノン(Steve Bannon)氏も名を連ねている。

 米国境警備隊によると、エルパソ一帯で拘束された移民は昨年10月から今年4月までに9万8052人に上っており、建設現場も中米出身者を主とする移民の米国入りによく使われる。

 アレンさんらの障壁は政府がこの地域に建設しようとしている国境フェンスと同じ仕様で、全長は800メートル。建設は1週間以内に完了するという。

 米政府は2016年以降、エルパソとシウダフアレスが接する地域の3区画、約40キロにわたりフェンスを建設してきた。映像はシウダフアレスで27日撮影。(c)AFP