【5月25日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米政権は24日、サウジアラビアなどアラブ地域の同盟諸国に対する81億ドル(約8900億円)相当の武器売却について、イランの脅威を理由に議会承認を迂回(うかい)して実施する措置を取った。売却した兵器がイエメンで民間人の殺害に使われかねないと懸念する議員らは、怒りの声を上げている。

 マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダンへの武器移転22件を議会による所定の審査・承認を経ずに行うと表明。議会に武器売却を凍結されれば、アラブの同盟諸国の作戦遂行能力に影響が及びかねないと述べた。

 また同長官は、一連の兵器や、それに付随する弾薬と航空機整備への支援には、「イランの侵略を抑止するとともに、協力国に自衛能力を構築する」目的があるとした。

 今回の売却計画は、上院外交委員会の民主党トップ、ロバート・メネンデス(Robert Menendez)議員が24日、ポンペオ長官に先立ち明らかにしたもの。メネンデス議員はこれまで、サウジとUAEに精密誘導弾を売れば、両国が攻勢を強めるイエメンでの人道危機が助長されかねないとし、自身の権限を利用して数万件の売却を阻止してきた。

 同議員は「トランプ政権がまたもや、長期的な国家安全保障上の利益を優先することも、人権を支持することもなく、サウジアラビアのような権威主義的国家の便宜を図ったことは、失望ではあるものの、驚きではない」と表明した。

 トランプ大統領は24日に中東への米兵1500人の増派を発表するなど、地域におけるイランの影響力を押し返すため大掛かりな措置を取ってきた。

 しかし米議会では、バージニア州を拠点にサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)を批判する執筆活動を行っていたサウジ人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏が殺害された事件以降、トランプ大統領の共和党の一部を含む議員らがサウジへの怒りを募らせている。(c)AFP/By Shaun TANDON