【5月23日 AFP】世界の海水温を上昇させている気候変動が、海の微小生物プランクトンの一部の群集の間で「憂慮すべき」北方への移動を誘発している──。これは、北半球全域のプランクトン群集の構成を調査した最新研究の結論だ。論文が22日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 食物連鎖で重要な役割を担うため、海洋の「構成要素」と呼ばれることもあるプランクトン。しかし今回、その生息地を移動させていることが明らかとなり、この目立たない生物は、気候変動が地球に重大な影響を及ぼしていることを示す新たなサインとなった。

 論文の筆頭執筆者で、独ブレーメン大学(University of Bremen)海洋環境科学センター(MARUM)の博士課程修了研究者、ルーカス・ヨンカーズ(Lukas Jonkers)氏は「これは、海洋生態系にとっては良い知らせではない」と話す。

 ヨンカーズ氏は、AFPの取材に「海洋生態系、あるいは少なくともこの一群の動物性プランクトンが、自然な状態から遠ざけられていることが確認されている。これは非常に憂慮すべきことだと思う」と語った。

「これは、たとえ世界気温の上昇幅を1.5度未満に抑えられても──それも危ぶまれているが──世界各地の生態系が多大な影響を受ける可能性が高いことを意味している」

 今回、研究対象となったのは「浮遊性有孔虫」として知られる生物で、特徴的な固い殻を持つプランクトンの一種だ。浮遊性有孔虫は、世界の海洋に広く分布している。これが死ぬと、その死骸は雪のように海底まで落下するが、頑丈な殻は時間の経過による崩壊に耐えることができる。

 結果、有孔虫の死骸は、どの海域にどのようなプランクトン群集が存在したのかを、数百年ほどさかのぼって研究者らに示すことが可能となる。これは、極めて貴重で比類のない記録の形成を意味するのだ。

 そしてこの記録は、気候変動が海洋生物に与える影響の調査において研究者らを長年悩ませてきた「明確な比較基準の設定」の問題を解決するものともなった。