【5月23日 AFP】気候変動で居住地や生計が脅かされているとする10家族が欧州連合(EU)を提訴した画期的な裁判で、欧州司法裁判所(European Court of Justice)が原告の訴えを却下していたことが分かった。原告側弁護団が22日明らかにした。

 弁護団によると、同裁判所は今月、個人にはEUの環境計画に対して訴訟を提起する権利はないとし、手続き上の見地から訴えを却下した。弁護団は上訴すると表明している。

 この訴訟は昨年5月、欧州各国やケニア、フィジーの10家族が、「大衆による環境訴訟(People's Climate Case)」と銘打って提起したもの。原告は、温室効果ガスの排出に由来する気候変動や、それに伴う干ばつ、洪水、海面上昇を抑制するため、EUはさらなる行動を取る必要があると主張している。

 専門家らは同裁判所の判断について、今後の気候関連訴訟に大きな影響を及ぼす可能性があると指摘した。

 弁護士のローダ・フェルハイエン(Roda Verheyen)氏は提訴に際し、原告は「すでに気候変動の影響を受け、損害を被っている」とAFPに述べていた。

 原告には、2017年の森林火災で自身の樹木をすべて焼かれたポルトガルの林業従事者や、生計の基盤である観光客が暖冬によって減少したイタリアのアルプス山脈(Alps)の一家などが含まれる。

 判事らは欧州司法裁判所ウェブサイトに掲載された判決文で、「あらゆる個人が何らかの形で気候変動の影響を受ける可能性は高い」と認める一方、EUはすでに温室効果ガスの排出削減に取り組んでおり、気候変動の影響はEUを訴える根拠にはならないとの判断を示した。(c)AFP/Patrick GALEY