【6月1日 AFP】フランスを代表するチーズ、カマンベールのラベル表示について、従来の生乳だけではなく、低温殺菌牛乳を原料とするものについても「カマンベール・ド・ノルマンディー」の表示を認める案が当局より提出され、チーズ愛好家や生産者の間で議論を巻き起こしている。

 仏北部ノルマンディー(Normandy)地方の春の日差しの中、茶色と白色のまだら模様の牛が草を食べている。パトリック・メルシエ(Patrick Mercier)さんが生乳から作るカマンベールチーズは、受賞歴もあり、安くはない。だが、メルシエさんは自分のように誰もが生乳を使わなくても、カマンベールは作れると話す。

 今年で制定100年を迎えるフランスの厳格な食品・飲料呼称法は、もともとワインを対象とし、後に他の食品にも適用が広げられた。カマンベール・ド・ノルマンディーのラベル表示については1980年代初めに定められ、生乳のみを使ったカマンベールにのみ表示が認められている。だが、改正案が承認されれば2021年からは生乳と低温殺菌牛乳で、カマンベールのAOP(EUの原産地呼称保護)が2種類存在することになる。

 自らが放牧した牛の生乳を使ってカマンベールを作っている生産者は、今では2生産者のみ。メルシエさんはその一人だ。AOPのカマンベール部門責任者でもあるメルシエさんは、今回の改正により、ここ数十年続くノルマンディーの酪農業の減少傾向に歯止めがかかると期待している。

 改正案ではカマンベールの生産者に対し、牧草で育てられたノルマン種の牛乳をこれまで以上に使用することも求めている。ここ数年、ノルマン種は、より生産性の高いホルスタイン種に取って代わられる傾向が続いている。

 メルシエさんは仏西部フレール(Flers)郊外の自身の牧場で、「われわれはノルマン種の牛が減っていく傾向を反転させなければならない」と訴えた。