【5月7日 AFP】ハエに性的満足を感じるかどうか聞くことはできないが、雌のショウジョウバエは、受精ではなく交尾そのものから得られた満足感によって一時的に他の雄への興味をなくすことが示されたとする研究論文が6日、米脳神経科学誌「ニューロン(Neuron)」に掲載された。

 生殖プロセスにおける雌の快楽が、進化の過程でどのような役割を果たしたかについての答えに一歩近づいたと言えそうだ。

 米ハワード・ヒューズ医療研究所(Howard Hughes Medical Institute)のウルリケ・ヘーベルライン(Ulrike Heberlein)上級研究員とカナダ・ヨーク大学(York University)のリーシャ・シャオ(Lisha Shao)氏は、キイロショウジョウバエ(学名:Drosophila melanogaster)の報酬系と呼ばれる回路に関与する神経細胞の調査から開始。最終的に、雌の腹部には「雌特有の」感覚神経があり、それが腹部の感覚系から脳に興奮を信号として伝達している可能性があることを突き止めた。

 生物学者らは長年、雌の体内に注入された雄の精子に含まれるたんぱく質が、他の雄に対する雌の興味を最長1週間失わせると認識してきた。これによって雄は、自身の精子が雌の卵子と確実に結びつくようにすることができるという。

 そこで研究チームは今回、雌のショウジョウバエと生殖能力のない雄のショウジョウバエを交尾させる実験を行った。その結果、雄が射精していないにもかかわらず、雌はその後、他の雄への興味を失った。他方、報酬系回路が阻害された場合には、雌は交尾を続けようとした。

 こうしたことから、腹部の感覚神経は、雌が交尾をしたと認識するメカニズムをつかさどることが示唆された。これは上述の「精子の効果」とは異なる。

 ヘーベルライン氏は、AFPに対し「交尾が成功するかどうかは、進化において非常に重要だ」「雌は交尾が成功したかどうか認識できなければならない。そうでなければ、何度も交尾しようとするだろう」と述べた。

 過去の研究では、雄のハエは射精で満足感を得ることが判明している。

 ヘーベルライン氏は、雌の腹部で見つかった感覚神経が交尾に関連すると現段階では「考えられる」が、交尾が快楽を与え得ると最終的に結論付けるにはさらなる研究が必要だと述べている。(c)AFP