【4月24日 AFP】国連安全保障理事会(UN Security Council)は23日、紛争地での性暴力撲滅を目指す決議を採択したが、当初の決議案にあった性暴力被害者に「性と生殖の権利」を保障する文言が、米国の反対によって削除された。

 当初の決議案はドイツが作成したもので、性暴力の加害者を裁判にかけるための機構づくりと被害者の権利保障を目的とする正式な作業部会の発足を提案し、被害者の「性と生殖の権利」を明記していた。

 しかしそうした機構の構築に対し、中国、ロシア、米国が異議を唱え、作業部会設置案は却下された。さらに米政府は、決議案に「生殖の権利」への言及があれば拒否権の発動もあるとしてけん制した。人工中絶に批判的なトランプ政権下の米国は、「生殖の権利」への言及は中絶を促すものだと批判した。

 この結果、土壇場の激論の末、決議案の内容が一部削除・変更され、採択が行われた。13か国が賛成票を投じ、ロシアと中国が棄権した。

 ロシアと中国は共に紛争下の性暴力に反対する姿勢を示したが、決議案の文言は「解釈に幅を持たせすぎて」いるなどと批判し棄権した。

 採択の前には、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」から逃れてヤジディー(Yazidi)教徒の人権保護を訴えノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラド(Nadia Murad)さんと、コンゴ民主共和国の著名な婦人科医、デニ・ムクウェゲ(Denis Mukwege)医師が演説し、国際社会は性暴力加害者に対する責任追及を怠っていると強く非難した。(c)AFP/Philippe RATER