【4月23日 AFP】ミャンマー北部カチン(Kachin)州で22日、中国の支援を受けた巨大ダム、ミッソンダム(Myitsone Dam)の建設再開の動きに抗議するデモが行われ、数千人が参加した。

 ダムの建設予定地は、ミャンマーを代表する河川、エーヤワディー川(Ayeyarwaddy River、旧称イラワジ川、Irrawaddy River)の上流。ここに発電能力6000メガワットのミッソンダムが建設されれば、シンガポールと同程度の面積が水没し、数万人もの住民が立ち退きを余儀なくされる。建設予定地から50キロほど離れたカチン州の町ワイモウ(Waimaw)で行われたデモの参加者たちは、ダム建設は大規模な環境破壊を招く上、ミャンマー側への恩恵はほとんどないと訴えた。

 デモ参加者の1人はAFPの電話取材に、デモには4000人以上が参加し、これに加えてさらに数千人が抗議活動に賛同する請願書に署名したと述べた。一方、地元警察はデモ参加者数を3300人としている。

■8年前に工事中断も中国が圧力

 旧軍事政権と中国政府は2009年、カチン州のミッソンにダムを建設する契約を締結。しかし民政移行に伴い、建設に反対する民衆の怒りが表面化したことから、総工費36億ドル(約4030億円)をかけたダム建設は2011年に工事が中断されていた。だが近年、中国は南部国境を接するミャンマーに対し、ダム建設の再開圧力を強めている。

 世界自然保護基金(WWF)の2018年版報告書によると、エーヤワディー川流域に居住する人の数は、ミャンマー人口の3分の2に当たる約3400万人に上る。

 ミャンマー政府の委託で5年前に実施された環境アセスメントは、ダム建設は広範囲にわたってエーヤワディー川の流れを変えかねないとして、建設中止を強く忠告している。

 アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問も、2015年の総選挙で自身が率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝して政権を握る以前はダム建設に反対の立場だった。しかし、今年3月の演説では「もっと広い視野で」ダム建設を考えるよう国民に促しており、スー・チー氏は建設賛成派に豹変(ひょうへん)したのではと、多くの人々が懸念している。(c)AFP