【4月18日 東方新報】中国で、「996勤務」が注目を浴びている。プログラマーの間で有名なソフトウェア開発者向けプラットフォームのGitHub上で、「996.ICU」と名付けられたプロジェクトが立ち上がったのだ。「996.ICU」は、「『996勤務』で病気になった人たち向けのICU(集中治療室)」を意味する。「996」とは、午前9時から午後9時まで、週6日勤務することを指し、多くの企業のプログラマーの労働状態を表している。「996.ICU」プロジェクトは、多くのプログラマーの共感を呼んでいる。

 中国の労働法では、労働時間は週5日・1日8時間と定められているが、現実はなかなかそうもいかない。インターネット業界だけでなく、金融、メディア、広告などの業界でも、週5日・1日8時間労働はぜいたくな望みだ。製造、サービス、宅配業などに至ってはもっと長い。中国経済の背後には、一般の労働者の辛い犠牲があるのだ。

 企業から見れば、労働力の安さはコスト削減になり、競争力を維持できる。労働者側から言えば、給与が低い時期に金を貯めようと思えば、懸命に働き、残業して稼ぐしかない。

 長期的に「996勤務」状態にある従業員にとっては、2つの選択しかない。満足のいく給与をもらい続けるために今の企業に残るか、辞めて労働と給与のバランスが良い企業を探すかのいずれかだ。多くの企業は、まさにこの手法で従業員を淘汰(とうた)している。怠け者や気持ちの浮ついた者が企業から離れていき、忠実で勤勉な者が残るように仕向けているのだ。

 一部のインターネット企業は、景気が悪化する中で市場圧力を受け、従業員を効率良く頻繁に流動させることで苦境脱出の契機を見いだそうとしているが、法規を遵守することが肝要で、従業員の権利を無視してはならない。

 従業員に「996勤務」に反対する権利があるかどうかは、企業との駆け引き次第だと言う人もいる。しかし現実には、企業の力がはるかに勝り、従業員にとっては受け入れるか、受け入れないかの選択しか残らない。

 労働市場での十分な企業間競争は、給与レベルを引き上げるだけでなく、従業員への福利厚生も改善する。有給休暇、祝祭日手当、支給品配布などは企業の発展と競争の中で整備・改善されるものなのだ。従業員福利の改善に伴い、給与待遇も向上し、インターネット業界ひいては全社会の「996勤務」現象は消滅していくだろう。(c)東方新報/AFPBB News