【4月14日 AFP】陸上女子マラソンの世界記録保持者であるポーラ・ラドクリフ(Paula Radcliffe)氏が、女子アスリートのテストステロン値を制限する規則を設けようとして物議を醸している国際陸上競技連盟(IAAF)への「支持」を表明した。

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 仏パリでAFPの取材に応じた英国出身のラドクリフ氏は「とても難儀で複雑な状況であり、誰にとっても完全にフェアであるという結論はないと思う」と語った。

 IAAFの規則では、いわゆる「高アンドロゲン」もしくは「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」のアスリートが女性として競技を続ける場合、テストステロンを基準値まで下げることを強要するものとなっている。

 ラドクリフ氏は、「彼女たちは自分で体を選んだのではない」「生まれ持ったものであり、その体で成長した。同時に競技の結果は明白であり、公平な状況ではないという証拠のデータがある」「将来的には、カテゴリーが二つ以上になるかもしれない」と述べた。

 スポーツ仲裁裁判所(CAS)は現在、女子800メートルの五輪女王で南アフリカのキャスター・セメンヤ(Caster Semenya)から、IAAFの規則に関する異議申し立てを受けている。同国のスポーツ・娯楽相を務めるトコジレ・カーサ(Tokozile Xasa)氏もまた、この規則は「女性の体を侵害するもの」と批判している。

 そうした中で45歳のラドクリフ氏は、「女子スポーツに独自の定義とカテゴリーが存在するのは当然のこと。なぜなら(競技において)女性は男性に歯が立たないから」と強調すると、IAAFが「女子のスポーツを保護し、公平な競技を構築しようとしている。それでも、CASにとっては非常に難しい裁定になる」と確信しているとも付け加えた。

「他の競技も成り行きを見守っている。自分たちにも影響があるから」

 ラドクリフ氏はセメンヤのような選手に同情を示しつつも、身体的に有利なのは不公平であると主張し、「誰にとってもフェアであることは不可能」とすると、「IAAFは体をいじれと言っているのではないと思う。女子のカテゴリーで競技を望むなら、テストステロン値を下げる必要があるということ。さもなければ、ノンエリートレベルの大会か男子の競技で戦えばいい」と語った。(c)AFP