【4月12日 AFP】米当局が、イスラエルに対する抗議の不買運動を呼び掛けている著名なパレスチナ人活動家の入国を拒否したことが分かった。米政府高官からは、不買運動を「反ユダヤ主義」とみなす発言も出ている。

 米入国を拒否されたのは、米ハーバード大学(Harvard University)やニューヨーク大学(New York University)、シカゴのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)などで講演が予定されていたオマル・バルグーティ(Omar Barghouti)氏。パレスチナ問題をめぐり対イスラエル制裁や不買を呼び掛ける「ボイコット、投資引き揚げ、制裁(BDS)」運動の共同創始者だ。

 バルグーティ氏は10日、米講演ツアーに出発しようとした際、テルアビブのベングリオン(Ben Gurion)空港で搭乗を拒否されたという。

 米非営利団体「アラブ系米国人協会(AAI)」によると、バルグーティ氏は2021年1月まで有効な米入国ビザを保有している。しかし、入国の権利を認めないとの通達が米当局からあったと空港職員に告げられたという。

 バルグーティ氏はイスラエルについて、「数十年にわたって軍事占領体制を敷き、アパルトヘイト(人種隔離)や民族浄化を続けているのみならず」「マッカーシズム(赤狩り)じみた理不尽な抑圧政策を、米国や、世界各地の外国人嫌いの右翼連中に外注する傾向が強まっている」と非難する声明を発表。今回の渡米では、米国在住の娘の結婚式にも出席予定だったと明かし、「傷ついたが、思いとどまりはしない」と述べた。

 BDS運動は、パレスチナを占領するイスラエルに対し、パレスチナ人の窮状を改善するよう圧力をかけるため経済、文化、学問の各分野で展開されているボイコット運動。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)にあるユダヤ人入植地を産地とする商品の不買運動も、その一つだ。イスラエルはBDS運動に激しい怒りを表明している。

 米ドナルド・トランプ(Donald Trump)政権に先ごろ任命されたエラン・カー(Elan Carr)反ユダヤ主義対策特使は11日、バルグーティ氏の入国拒否については話すことはないとしつつ、BDS運動について「誰でも好きなように買い物をする権利がある。イスラエルという国を経済的に抑圧する組織的な運動があるならば、それは反ユダヤ主義だ」と記者団に述べた。

 トランプ大統領はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相を強く支持し、保守色の濃い同首相から距離を置く民主党の政治家らを反ユダヤ主義的だと批判している。(c)AFP