【4月11日 AFP】フィリピン・ルソン(Luzon)島のカラオ洞窟(Callao Cave)で見つかった歯や骨の化石が、約5万年前に生存していた新種の人類であることが分かったと、フランスやフィリピンなどの国際研究チームが10日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表した。人類の進化系統図に、新たな分枝が加わった。

 化石が発見されたルソン島にちなんでホモ・ルゾネンシス(Homo luzonensis)と名付けられた新種は、現生人類の直系の祖先ではなく、そのはるか昔の「親戚」に当たる。

 人類の進化がかつて考えられていたような一直線上にはないことを示す証拠が次々と示されているが、今回の発見もそれを裏付けるものだ。

 一方、今回の発見によって、この種がどのようにルソン島にたどり着いたのか、祖先は誰なのかなど、数々の疑問も生じている。

 カナダ・レイクヘッド大学(Lakehead University)のマシュー・トシェリ(Matthew Tocheri)准教授(人類学)は同誌に掲載された論評で、「この驚くべき発見が今後数週間、数か月、数年にわたり、多くの科学的論争に火を付けることは確実だ」と記している。

 フランス、フィリピン、オーストラリアの国際研究チームはこのほど、カラオ洞窟で5万~6万7000年前の歯7本と骨5本を発見した。この洞窟では2007年、6万7000年前の骨が見つかっていたが、どの初期人類のものかは明らかになっていなかった。

 研究チームは少なくとも3人のものとみられるこの化石の調査を行い、新種の人類の骨だとの結論に達した。

 研究を率いたフランスの人類博物館(Musee de l'Homme)の古人類学者、フローレント・デトロイト(Florent Detroit)氏は記者会見で、「比較と分析を行い、これまでに類型化されてきた種とは異なる、特殊な種であることを確認した」と述べた。

 今回の発見は、多くの疑問も生じさせた。例えば、ホモ・ルゾネンシスはどのようにこの島にたどり着いたのか。本土からルソン島に来るには、「かなり長時間、海を渡る」ことが必要だと研究者らは話す。

 さらに、アフリカの化石記録に残されているどの種がホモ・ルゾネンシスの祖先にあたるのかについては、研究者らもまだ確信していない。

 進化論は長い間、ホモ・エレクトス(Homo erectus)とよばれる初期人類種が、150万~200万年前にアフリカから分散したという考えを軸にしてきた。

 だが、2004年にインドネシアの島で発見されたホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis、通称「ホビット」)など、近年、ホモ・エレクトスの子孫とは思えない種が複数発見されていることから、この説には異論も出ていた。

 トシェリ氏は、ホモ・ルゾネンシスの発見によって、「ホモ・エレクトスは地球を歩き回った唯一の初期人類種ではない可能性を示すさらなる証拠が示された」と書いている。(c)AFP/Sara HUSSEIN