【4月9日 AFP】フランス軍の元スパイで、豪シドニー・オペラハウス(Sydney Opera House)のアーチ構造の設計を実現させた天才技師、ジョー・ベルトニー(Joe Bertony)氏が97歳で死去した。関係者が8日明らかにした。

 現地紙シドニー・モーニング・ヘラルド(Sydney Morning Herald)によると、ベルトニー氏は7日、シドニーの自宅で死去した。

 ベルトニー氏は、オーストラリアで誰もが知る建築物であるシドニー・オペラハウスの建設に携わった技師の一人。ヨットの「帆」を思わせるオペラハウスのコンクリートシェル構造を実現するために、3万種類もの方程式を手書きした。

 シドニー・オペラハウスのルイーズ・ヘロン(Louise Herron)最高経営責任者(CEO)は「それらの方程式は、当時オーストラリアに1台しかなかった十分な容量のコンピューターを使って確認されたが、誤りは一つも見つからなかった」と述べた。

 オペラハウスに関する本の著者ヘレン・ピット(Helen Pitt)氏によると、ベルトニー氏は地中海の仏領コルシカ(Corsica)島で生まれ、船舶海洋工学を学ぶためにフランス海軍に入隊。その後スパイとなるよう勧誘された。第2次世界大戦(World War II)中はドイツ軍に2度捕らえられ、強制収容所に送られたが、2度とも脱出に成功した。戦時中の行動をたたえられ、フランス政府からクロワ・ド・ゲール(Croix de Guerre)勲章を贈られている。(c)AFP